書評の練習

『蛙鳴』莫言 ―中国の「市民」小説―

『蛙鳴』莫言 蛙鳴(あめい)作者: 莫言,吉田富夫出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2011/05/01メディア: ハードカバー購入: 2人 クリック: 33回この商品を含むブログ (24件) を見る これはある種の市民小説的な作品だ。トーマス・マン『ブッデンブローク…

私小説はいかにしてSFとなるか 

「田紳有楽」藤枝静男 田紳有楽・空気頭 (講談社文芸文庫)作者: 藤枝静男,川西政明出版社/メーカー: 講談社発売日: 1990/06/05メディア: 文庫購入: 7人 クリック: 54回この商品を含むブログ (78件) を見る 稀代の私小説作家である藤枝静男の「田紳有楽」は、…

「日常」としての「プロ野球」 

田中慎弥『神様のいない日本シリーズ』 神様のいない日本シリーズ (文春文庫)作者: 田中慎弥出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2012/04/10メディア: 文庫 クリック: 5回この商品を含むブログ (5件) を見る 第140回芥川賞の選評では、選考委員に「なんでもか…

『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』

木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか作者: 増田俊也出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2011/09/30メディア: 単行本購入: 21人 クリック: 475回この商品を含むブログ (131件) を見る 『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』は、著者である増田俊也の実…

トム・ゴドウィン『冷たい方程式』

冷たい方程式 (ハヤカワ文庫SF)作者: トム・ゴドウィン・他,伊藤 典夫出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2011/11/10メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 28回この商品を含むブログ (35件) を見るSFのアンソロジー。初心者に最適の入門書! という帯が踊って思…

ICC 三上晴子 欲望のコード

ICC 三上晴子 欲望のコード http://www.ntticc.or.jp/Exhibition/2011/Desire_of_Codes/index_j.html 2011年10月22日から、12月18日まで初台はICCで開催中。 メディアアートはあまり得意ではないのだけれど、これは久しぶりに面白い時間を過…

カウボーイ&エイリアン

カウボーイ&エイリアン http://www.cowboy-alien.jp/ 「 カウボーイ&エイリアンを見に行こうと思う人がいたら、その人はいくつかの意味でやや特殊な性癖の持ち主か、好きな俳優がでているかのどちらかだと思われる。どう見てもB級、どう考えてもB級、実際…

child-of-eden.

http://child-of-eden.jp.ubi.com/ ドリームキャストで発表された快作「Rez」を創りだしたスタッフ。そして、HD機のハイスペック。 それらを併せ持って生まれたのが、このchild-of-eden.だ。 くさくさして、ひどく憂鬱で沈鬱な気分の時に、さらに沈鬱になる…

孤児の行く末

そろそろ、僕達とカトリ企画との演劇と文学とその他もろもろな雑誌『BOLLARD』の告知もしたいんだけど多忙で多忙で、それから少し体を壊してしまっていたりして、たぶん今日のエントリか、明日のエントリで文学フリマの話と一緒になんやかんや言うと思います…

これもまた手元にないのだけれど。

予告された殺人の記録 (新潮文庫)作者: G.ガルシア=マルケス,Gabriel Garc´ia M´arquez,野谷文昭出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1997/11/28メディア: 文庫購入: 11人 クリック: 95回この商品を含むブログ (221件) を見るガルシア・マルケスの『予告された殺…

ディヴィッド・ポルターの著作から。

電子書籍に関する議論や書物が多数刊行されている。新しい技術は新しいコンテンツやチャンスを生み出すと決まってはいて、最終的にコケてしまうにせよ、メシウマな思いをするができるにせよ、どちらでも手を付けないことには始まらないということもあって、…

田中久美子『記号と再帰』東京大学出版会

この本のことをしったのはジュンク堂新宿店にあった手作り壁ポスターで、そこに、Twitterでプログラマーがこの本を読み進めている様を「実況」していたのが、面白かったとあったからだ。本にしても音楽にしても現在は「レコメンド」がうまく機能していない、…

ろりえ「三鷹の化物」@三鷹氏芸術文化センター

ろりえ、という早稲田発の劇団には、よい思い出と悪い思い出がある。もう12本近い公演を打っている中堅(よりちょっと若手気味)の劇団だけれど、全力かつアッケラカンとした悪ふざけ、無駄な(それは抵抗、なんてことばではくくりようがない)反権威主義…

ゴーストの条件

ゴーストの条件 クラウドを巡礼する想像力 (講談社BOX)作者: 村上裕一,村崎久都出版社/メーカー: 講談社発売日: 2011/09/02メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 4人 クリック: 601回この商品を含むブログ (28件) を見る読み終わりました。 なんだか、これ…

最近読んだ本

ハーバーマスと教育作者: 野平慎二出版社/メーカー: 世織書房発売日: 2007/10メディア: 単行本購入: 1人 この商品を含むブログ (2件) を見るハーバーマスのコミュニケーション理論を教育の観点から読み直す本。けっこう面白い。ハーバーマスはなんだかんだで…

ブックデザインに宿る意思。

難しい話、あるいは熱の入った演説、もしくは説教か、でなければ愛情の爆発とでもいうべき「萌え絵」についての長大な解説を聞いても、それなりに多くの人は「アニメっぽいのはちょっと」という心優しい一言か、でなければ「オタクきもちわるい」という本心…

記憶に残るブック&マガジン

記憶に残るブック&マガジン作者: 深沢慶太,小山泰介出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ新社発売日: 2008/11/12メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 12回この商品を含むブログ (12件) を見る 編集者という職業が、作家や絵師たちとならんでクリエイティビテ…

グラミネ009 早稲田大学の第二文学部公認の雑誌。表現芸術の人たちががんがんがんばって作っている雑誌で、9号を数える。地味に超豪華なつくりで、早大の教授(客員も含めて)がずらりと並ぶラインナップである。 うちの『S.E.VOL1』でも宮沢章…

おわりの雪

おわりの雪作者: ユベール・マンガレリ,田久保麻理出版社/メーカー: 白水社発売日: 2004/12/10メディア: 単行本 クリック: 15回この商品を含むブログ (28件) を見る まずなによりも、トビという肉食の鳥を飼いたいという欲求。<ぼく>がそれをもったのは雪…

エウラリア 鏡の迷宮

エウラリア 鏡の迷宮作者: パオラカプリオーロ,Paola Capriolo,村松真理子出版社/メーカー: 白水社発売日: 1993/06メディア: 単行本 クリック: 15回この商品を含むブログ (1件) を見る 『エウラリア 鏡の迷宮』はイタリアを代表する作家の一人、パオラ・カプ…