記憶に残るブック&マガジン

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 編集者という職業が、作家や絵師たちとならんでクリエイティビティを発揮するポジションだと認識されたのはいつからなのだろう。
 「描かれるべき/書かれるべきことは全て書かれてしまった。」この認識をポストモダン症の典型的な認識だとするなら、本という媒体において「全てのかかれてしまったこと」のデーターベースからコンテンツをセレクトしパッケージする編集技術に、創造的な技術の比重が移っていくことはむしろ当然のことなのかもしれない。それで作家たちの職業が脅かされることはないにせよ。

 この本は魅力的な「編集者」たちの生き様をインタビューしたものだ。編集の現場で脈動する人々の交流、仕事に向き合う姿勢が熱い。インタビュアーも精力的に取材をしており、知識/インタビュー技術の高さをうかがわせる。

 紹介されているインタビューたちは以下の9人。

  • 幅 允孝[「BACH」ブックディレクター]
  • 箭内 道彦[「風とロック」編集長]
  • 田中 杏子[[Numero TOKYO]編集長]
  • ルーカス・バデキ・パルコ[「PAPER SKY」編集長]
  • 鈴木 芳雄[「BRUTUS」副編集長]
  • 米原 康正[写真家、編集者]
  • 管付 雅信[編集者]
  • 赤田 祐一[「dankaiパンチ」編集長]
  • いとう せいこう[「Planted」編集長]

それぞれ編集に対するスタンス、キャリアの積み方はまったく違っているが、「ただの消費に終わらない」もの、強度のある作品を目指すという姿勢では一貫している。

田中 (略)その中で考え方として変わらないのは、「消費だけじゃいけない」ということ。ただTVを時間潰しで見て、漫然と生きていくことだってできるけれど、そうやって子供の頃から過ごしてきた人が、果たしてどんなクリエイションを発揮できるのか。そうならないためには、自ら進んで探求していく死しえが必要だと思う(田中 杏子インタビューp81)

いとう つまらないもの、安易なものに対するカウンターカルチャーとして、自分なりの表現をやっているわけです。(いとうせいこうインタビューp205)

編集は黒子という時代もあったけれど、今はそれを乗り越える段階にも来ているのかもしれない。エディットの可能性を豊かに広げてくれる編集者たちの生き様を、みよ。