ゴーストの条件
- 作者: 村上裕一,村崎久都
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/09/02
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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読み終わりました。
なんだか、これで「ゼロアカ道場」も本当におわってしまったんだなと感慨ひとしお。
むしろ「電波的」で薬物的な文体に魅力があった村上裕一氏の文章は、この本では研ぎ澄まされ鋭利で明快な文体に改められています。
正直に言ってしまえば、ちょっと不満がないわけでもない。
内容に関しては多数のレビューが存在しています。
僕が「あらためて」指摘するべきことはありません。ゴーストの概念分析の弱さ/ネットカルチャーの偏重。そのサイズの狭さがこの本の悪いところならば、それにもかかわらず粘り強い概念分析を行うことで、「ゴースト」と「水子」という想像力と実存の境界を析出したことがその成果だと言えるでしょう。
この本は、この本が取り上げている作品ごとの分析以上に多くのことが書かれています。多くの欠点や、苦しい議論や、みえみえのレトリックや乗り越えられないままの課題があります。
しかし、最後の「終わりに」にある生きることと哲学と批評との関連のなかで、アイロニカルな見立てであふれたゼロ年代を超えて、新しい希望を紡いでいく決意を表明していく文章には高潔で荘厳な魅力を感じました。
未熟なところもあります。誤った認識もあります。
しかし、力強い。その強さはこの本が論じていること以上の価値を、この本に与えています。
世界に羽ばたくのにふさわしい一冊です。