最近読んだ本

ハーバーマスと教育

ハーバーマスと教育

ハーバーマスのコミュニケーション理論を教育の観点から読み直す本。けっこう面白い。ハーバーマスはなんだかんだで「成人性」を前提としてしまうけれど、教育目標として「ディスクルス」の形成を可能にする存在を掲げられるというのは、なかなかいいなと思った。実際にはそう簡単にはいかないだろうけれど。
 でも難しくてよくわからんことも多い。

歌論歌学集成 (第16巻)

歌論歌学集成 (第16巻)

『清水宗川聞書』『梨本集』『用心私記』を収める。もちろん『梨本集』がお目当てなのだけれど、どれ読んでも面白いなぁ。この時代にはもうほとんど用例主義で、二条派的な難解な歌論や中世の秘伝的な歌学はなりを潜めている。『用心私記』もよかった。坂光淳が晩年に若い頃にならタ烏丸光雄の教えを記したもの。自説もけっこうある。ちょっと目を引いたのは例えばこんな文章。

【十三】
一、「歌を詠じ習に学文なくてはいかゞ」といふ人有。学問は歌稽古のみならず、惣而身を脩、国家天下を治るの大き成より、微細の事に至るまで、なくては不可有事なり。さりとも一首を詠じ習ふには、あながち学問の才によるにはあらず。一書をも慥かに心得なくして達者に詠む人、昔よりある事也。尤も学問有人の詠じ習ふは、たとへば網と筌とを持たる人の、淵にのぞみて魚を得んと窺がごとし。その魚を取術こそ知らざれども、道具あればやがて魚取術は覚る事やすかるべし(後略)

 才能にうちまかせてやるのもいいけど、道具を身につければ魚とりみたいにうまくなれますよ。ということ。中世初期ではむしろ「学問」を嫌ったわけだけれど、江戸まで来るとやっぱり学問も大事だなぁと思われるようになっていたんですね。現代の小説家(志望も)にも金言としていただきとうございます。