Mrs.fictions 15minutes made Vol.8

本日で千秋楽を迎えた劇団Mrs.fictions「15minutes made Vol.8」を見てきましたよっと。

今注目の劇団、6 団体の作品を一度に楽しめる演劇イベント「15 minutes made」、
2010 年一回目の開催です。ひとくちに小劇場といってもその表現は様々。
並べて観れば小劇場の今・そして未来が見えてきます。
色彩豊かな15分×6をどうぞお楽しみ下さい。
たかが15分と侮ることなかれ。あなたの心を絡めとるには充分な時間なのです。

 この「15minutes made」は15分演劇×6団体というパッケージで展開される演劇にもっと親しくなれるプロジェクト。
 前回もこのブログで取り上げました。15分間という極めて短い時間で、客の心をずばりとつかむ演劇を展開できるか否か。しかも前の劇団とか前の前の劇団とかとかぶったりかぶらなかったりするのかしないのか、客も劇団も真剣勝負。舞台セットも自由度高すぎでいろいろと気を揉ませる仕掛なのですが、三劇団観劇後に休憩をはさみ、また三劇団+おわりの会、という構成がすばらしい。
 なかなか途中でトイレに立ちづらい舞台芸術でも、確かに初心者向け(しかも一度で六回美味しい)な仕掛になっています。

 見てきたのは本日の六時開始の回、千秋楽でした。
 少し役者さんにも疲れが見えたところもありましたが、回数をこなしたおかげか、こなれた芝居で最高のパフォーマンスを発揮していました。
 今回の舞台セットは本当にすばらしかった。沢山のでスクリーンと空間を兼ね、そこに映像を組み合わせて立体的且つ効果的に映像を使用できていました。映像演出を積極的に使う劇団がなかったのが残念といえば残念。ただ、無数の糸を使った舞台セットで、舞台そのものは非常に狭く、コンテンポラリーダンスや、アートパフォーマンスの劇団がいたらこのセットは使えなかったかもしれませんね。
 
 波乱含みのスタートで、しょっぱなから、まさかの照明トラブル。いきなり真っ暗になった劇場内で、国道五十八号戦線さんの演劇が何事もなかったかのように続けられていたので観客全員「あ、なんていうか、演出なのか」と思ったやさき、mrs.fictionsの代表が出てきた時には笑いました。トラブルなんかにメゲない、国道五十八号戦線の役者魂に心揺すぶられましたね。

以下、個別に。

国道五十八号戦線 『さっき終わったはずの世界』 出演:金丸慎太郎、ハマカワフミエ、田中美希恵

 宇宙人に地球の終を宣言されてから巻き起こる愛と裏切りの15分間。証明トラブルに負けない役者根性と金丸氏のアドリブ力に魅せられました。すごい展開があるとかではないけれど、その分よくできた、演技と演出を魅せるSFコメディとして笑わせてくれました。

劇団芋屋 『てめぇは草食ってろ』出演:磯矢拓麻、桑原礼佳、鈴木亮平、菅田正照

 草食系男子が悪友の家に酔った女性を連れ込む話。野郎同士の掛け合いが抜群。女優さん(桑原)の酔っ払った演劇にもうなりました。こちらもウェルメイドなコメディで、笑ってみていたけれど、観客席の男子たちからには胸がいたくなった人もたくさんいたはずです。ラストの「お前もう帰れよ」がきつく、なぜか切ない話でした。

時間堂 『池袋から日暮里まで』出演:金子久美、大川翔子、高橋浩利、黒澤世莉

 二つの時間が舞台上で流れる話。最初は設定も含めて訳がわからないのだけれど、池袋から西日暮里までの車中の対話が進むに連れていろいろと明らかになっていく。「時間を作る劇団です」と書いてあったような気がするけれど、なるほどなぁと思いました。時の残酷さを感じる、とても感傷的な作品でした。いささか途中の会話がタルかったか。15mmではけっこう時間トリックを使う劇団も多いので、もう一工夫欲しかった。
 前の2劇団と異なり、とても静かでちょっと残酷な対話劇。質量のある演劇で、僕はすごく好きです。

Mrs.fictions 『Yankee Go Home(ヤンキー母星に帰る)』出演:岡野康弘、松本隆志、梅舟惟永(ろりえ)、川口聡

 この劇団は出てくるたびに作風が変わるような気がします。器用すぎるのか精神病なのか(笑)。今回は桃太郎とヤンキーと竹取物語をベースにしたSFコメディで、中身は全く無いんですが、なんかもう動いてるだけで笑えます。特攻服に「時間堂上等」と書いてあって、すっかり主宰だということを忘れてるハッチャケぶりでした。会話のセンスがいい。どうでもいいんですが、僕が見に行く劇団、なんだかどこにいっても梅舟さんがいるような気がする。面白かった!

PLAT-formance 『R.F.D.』出演:安藤理樹、吉田能

 二人芝居のコメディ。シチュエーションコメディの王道を行くような刑事モノで、かけあい力が抜群。呼吸が合いすぎでした。最初の導入が弱かった分、後半の漫才には引きつけられました。でも何かいえ、と言うと面白かった以外に言いにくい感じ。もうちょっと何かほしかったかな。

TOKYO PLAYERS COLLECTION 『TOKYOが始まる』出演:黒木絵美花、佐藤祐香、富永瑞木、和知龍範

 こちらは東京を舞台にした作品2000年に大学進学と同時に上京してきた男性と東京との交流を描く。東京を擬人化しての演劇は演劇らしい大胆な設定でしたが、生活のディテールが大学生だった僕にとっても他人事じゃなかったなぁ。こちらも導入が若干弱く、途中の東京に対する気持ちも多少ステレオタイプすぎて面白みにはかけたかも。15分間に詰め込みすぎな感じも受けましたが、コンセプトはよかったなぁ。

 
 全体的な感想としては「おわりの会」でも言っていたとおり運営やなんかが安定してきて面白くなってきた! という思いがある一方で、参加する劇団がいわゆる「現代口語演劇」になってきたことと、作風的に「笑えてよくできた」芝居ばかりが増えたことが残念といえば残念かもしれません。よく笑えて満足感でお腹いっぱい、というのが多くの劇団の志向するところとは思いますが、コンテンポラリーダンスなんかをやってる人たちや、あるいはもっと変な芝居をやってる人たちも見てみてたい。
 それに対比する時間堂の切ない演劇も15mmでは見どころの一つですが、「同時に二つの時間を流す」のような15分間の話の作り方(メソッド)がある程度固定化してきたのか、という印象があります。若干、前回前々回などと似たような印象をもつ演劇が増えたかもしれません。
 20分や30分という単位でもmmを開催してくてもいいかもしれません。新しい時間の制約が、新しい物語構想や演劇が生まれる刺激になるのではないかしら。

 それにしてもこれ、面白い試みだと思いますね。ドでかい箱で数億かけてやるようなことではなく、彼らのような少ないスタッフで〈場〉を作る。そういう試みを応援してます。つか、うちの雑誌に出てくれないかな(笑)

 ひだらすブログでは、これからも演劇関係ウォッチを続けていく・・・かと思います(自信なし)

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