Sebastianとmahakoyoの対話篇
mahakoyo:
こんにちは、mahakoyoです。
今回の企画では、音楽の話をしていきたいと思います。
今回の、と言っておいてなんですが、次回があるかはわかりませんw
さて、良い音楽には、音楽として良い理由があるのだと思います。音楽を言葉で汲み尽くすことは難しいけれど、だからこそ、音楽を語る言葉を、探してみたい。
そのために、具体的な楽曲を分析することで、より理解を深めていきたいと思います。
理論的な話も多くなってくると思います。てか、理論的な話がほとんどです。
でも大丈夫です。
俺も分かっていません! (どーん)
音楽理論は、僕、ほとんどわかりません。
この企画で勉強していきたいなと思ってます(ぇ)
僕は、専門的な知識を持っていません。なので、楽曲の分析はSebastian君が担当します。
さて、前置きを長くしてもしょうがないので。
Sebastian君宜しくお願いします!!
Sebastian:
はい、宜しくお願いします。
mahakoyo:
今回取り上げる楽曲は、菅野よう子作曲「創聖のアクエリオン」です。
もともとはアニメの主題歌でしたが、パチンコのCMで流れたり、某動画サイトでも弾幕ブームの火付け役になったり(笑)と、何かと話題になった楽曲です。
どうしてこの曲なんでしょう?
Sebastian:
一回目ということで、知名度が高い最も分かりやすい楽曲ということで、この曲を選びました。特徴的な曲なので、音楽の予備知識が無い人でも「なるほどっ!!」と、わかってもらえるんじゃないかなー。
mahakoyo:
なるなる、把握です。
僕も音楽理論があまりよくわかってないので、それは助かりますw
Sebastian:
音楽理論は難しいよね(´Д`)
mahakoyo:
作曲できるようになりたかったから、一度ちゃんとやろうと思ったこともあったんですよ。「和声学」っていう、和音の勉強から始めようと思って、噂の入門書を買ったんです。でも数ページで挫折しましたw
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Sebastian:
そwwwれwwwはwww
いきなり和声はキツイよww
コードからなら、比較的入りやすいのかなあ。
mahakoyo:
楽器とかも、そんなにやってきた訳ではなかったからね。
お手柔らかにお願いします(゚∀゚)
Sebastian:
そのつもりですw
では実際に音を聞きながらやっていきましょう。
mahakoyo:
はい!
曲の詳細等については、最後にまとめておきました。曲を聴きながら読んで頂けると助かります。
では、ちょっと僕らも聴いてきます。
Sebastian: mahakoyo:
(視聴中)
mahakoyo:
良い曲ですね。菅野よう子氏の曲は、グっときますっ!
Sebastian:
はい、では実際に読みといていってみましょう。
まずは、一番僕が面白いと思った所を分析したいと思います。
Bメロからサビにかけて。
Sebastian:
この部分ですね。
mahakoyo:
グッときますなあ(´∀`)
Sebastian:
うん。
で、特に聞いてほしい部分はこの部分。
「きずつかないで ぼくのはねー」
mahakoyo:
うんうん。
Sebastian:
「きずつかないでぼくのは」
までは、ニ長調なんです。
で、「ねー」から劇的に変わるんです。
mahakoyo:
ふむむ。ニ長調、そういう所も実はあまりわかってないんだよね( ゚д゚ )
Sebastian:
音楽には、いろんな約束事があるんですね。
約束事のひとつに「調」があります。
ハ長調とか、ニ長調とか、ト短調とかって、聞いたことありませんか?。
J-POPで最後のサビの部分の音が高くなって、曲が盛り上がった感じになるでしょう。
それは「調」が変わってるからなんです。これを「転調」っていいます。
mahakoyo:
それくらいならわかるかも。了解。
Sebastian:
音楽には、「普通だったらこう流れる」っていうパターンがあるんです。
コードの組み合わせ方にも「よくあるパターン」みたいなものがあるんです。
ちなみにコードというのは、二つ以上の音で構成された響きのようなものです。
まあ、後で実際に聴いてみましょう。
mahakoyo:そうしてくれると助かりますmm
実際に聞いてみればイメージがつかめるかもわからん。
Sebastian:
うん。で、本題に戻るけども、
「きずつかないでぼくのは」
ではニ長調だったのが、
「ねー」
で突然「よくあるパターン」から外れる。
普通では使わないようなスケールに飛ぶんですね。「ミクソリディアスケール」という旋法を使ってます。
mahakoyo:
ミクソ・・・?え?ww
Sebastian:
うーん、つまり、ハ長調とかト短調とかいう言葉をよく聞くでしょ?
mahakoyo:
うん、聞く聞く。
Sebastian:
菅野よう子はその、つまり、〜長調や〜短調では現せない調を使っているんです。
※一回目がハ長調、二つ目がニ長調、三つ目がミクソリディアスケールです。
mahakoyo:
なんか、すごい気がする・・・!
Sebastian:
ミクソリディアスケール自体は、そこまで珍しい訳ではないんです。
ビートルズとかよく使うし、JPOPでもたびたび使われます。
でも、菅野よう子がすごいのは、ずっとニ長調できてたのに、いきなり何の前触れも無く、このスケールに入ってくるんです。こういうトリッキーな使い方出来る人ってなかなかいないんですね。
mahakoyo:
へええええええ
Sebastian:
ミクソリディアスケールの響きをきっかけに、
そのままどの調とも言えないものが、サビまで続きます。
ここからがまた凄い。
mahakoyo:
Sebastian:
サビの入る前のコードにもよく使われるパターンがあるんですね。
例えば、このアクエリオンのサビは、Eコードなんですが、でEコードにつながりやすいコードというのがあるんです。それはズバリ、BもしくはB7コード。
「このきもちしーるたーめ うーまれてきーたーぁぁぁぁぁぁあああ、ああっ!」
最後に「ああっ!」って上がる所ね。
これにもちゃんと理由があるんだけど、そこ説明すると長くなるので、とりあえず聞いてみてください。
Sebastian:
BコードからEコードだとこうなる。
mahakoyo:
良い曲だなあ〜
Sebastian:
ちょっと待ってwこれまだビフォーですw
よくあるコードを使うと、こうなるよっていう見本でしかない。
ところが、普通、BかB7のコードを使うところ、菅野よう子氏はAコードを使ったんです。
mahakoyo:
おお
Sebastian:
驚くのはまだ早い(・∀・)!!
Aコードは、ラとド#とミの音の三音で構成されているんですね。
で、普通は、和音のベースの音って、この三つの音のどれかになることが非常に多いんですが、菅野よう子氏はここの部分、ベースにシの音を使ってます。
この部分、メロディもシの音なんです。
mahakoyo:
おおおおお
Sebastian:こうなると聴き手は、もう次にどんな流れになるか予想が付かないんです。
更に、更にだよ? サビの最初のコード。ここもおかしいw
サビは、ホ長調。
ここの冒頭に使われるコードで、最もよくあるパターンにハマるのが、Eコードなんだけれど、菅野よう子氏はここで、C#マイナーのコードを使ってる!
ということで、ちょっと聞いてみようか。
mahakoyo:
わっふるわっふる
Sebastian:
先ず、普通のコードで進行させるとこうなりますね。
mahakoyo:
良い曲だなあ〜
Sebastian:
だからまだビフォーですw
菅野よう子氏はこうやってる。
mahakoyo:
・・・・・・!!!!
Sebastian:
これがアフター。どう?全然違うでしょ?
mahakoyo:
(三回聞いてみた)
全然違う!! 凄い・・・!!
Sebastian:
普通の人がやると、
- サビ前Bコード(orB7コード)
- サビEコード
なのだけど、菅野よう子は、
- サビ前Aコード(しかもベースやメロディは違う音)
- サビの冒頭のコードがC#マイナー。
普通に聴いただけだとあんまり意識しないと思うんだけど、細かい所で物凄く凝ってるんですね。こういう細かい点が菅野氏の楽曲の強度を支えているんです。
mahakoyo:
なるほど、や、言っている事は実はあまりよくわかってないような気がするけど、凄さみたいなものは伝わってきたような気がします!
Sebastian:
最初はそんな感じで十分だと思います。
徐々に深みに入って、いつか自分で曲作ったりする時に、ふと思い出して貰えればひとつの参考にはなるんじゃないかな。
そして、もうひとつ、言っておきたい事があります。
菅野氏は、彼女は天然でこんな曲を創っている訳ではないということです。
ちゃんと音楽の構造を熟知した上で、創っています。
でなければ、どこかで必ずブレがきます。
菅野よう子は、「創聖のアクエリオン」のようにトリッキーな技術を使った曲を、他にもずいぶん描いていますが、どれもちゃんと「音楽」としてまとまって聴こえる。
菅野氏の音楽が常に安定しているのは、音楽の構造をしっかり学び熟知しているからなんです。
mahakoyo:
なるほど。
「菅野よう子は天才だ」
っていろんな人が言うけれど、それは天賦の才だけじゃないんですね。
しっかり音楽を勉強してきたから、こういう感動的な曲を作れるんですね。
Sebastian:
その通りです。
mahakoyo:
有難う御座いました!
さて、そろそろ紙面の都合上このくらいかなと思います。
僕はとても面白かったです。
Sebastian:
私も面白かったです。
なかなかこう、言葉にして曲を分析したりする機会が無いのでw
mahakoyo:
貴重な話を有難う御座いました。
また勉強させて下さい。
次回はあるのかなw
Sebastian:
どうでしょうw
mahakoyo:
まあ、気が向いたらまた宜しくお願いしますmm
Sebastian:
はい、宜しくお願いします。
mahakoyo:
それではまたの機会にノシ
Sebastian:
はい〜、ではではノシ
mahakoyo:
今回は菅野よう子作曲『創聖のアクエリオン』を取り上げました。
本文でも述べられていますが、
「菅野よう子は天才だ」「菅野よう子は女神だ」
というような氏を礼讃する言葉はよく聞くけれども、
「どのように天才であるか」
という点についてはなかなか触れられなかった点ではないでしょうか。
今回の企画ではそういった点に踏み込んでみたかった。
具体的には、人物像やジャンル横断的な側面ではなく、楽曲そのもの、即ち「音楽」にぶつかってみたかったというのがありました。
ここで分析したからと言って、本楽曲を語り尽くした事にはなりませんが、普通は見過ごしてしまいそうな点に、これを読んで頂いたあなたが、気付く事が出来たなら幸いです。
※
尚、本楽曲引用の著作権の問題につきましては、批評、研究などの引用の目的上「正当な範囲内」であり、よって、著作憲法上、適切な引用であるという認識に立っています。
また、できる限り平易な説明をしている為、所々言葉の定義に厳密でない箇所が御座います。ご了承下さい。
midi制作
Sebastian(UtAGe)
http://utagemusic.net/
引用楽曲
『創聖のアクエリオン』
リリース 配信シングル:2007年10月10日
CDシングル:2007年11月7日
ジャンル 2007年
時間 14分13秒
レーベル flying DOG