TOKYO PLAYERS COLLECTIONの旗あげ

TOKYO PLAYERS COLLECTION(以下TPC)の旗あげ公演「パーティが始まる」を観劇してきました。
http://stage.corich.jp/stage_detail.php?stage_id=20662
http://tokyoplayers.jugem.jp/


TPCの芝居を初めてみたのはMrs.fictionsの15minutes made。上京したての学生が不安と希望をもちながら、東京で暮らしていく様を描き出したスタイリッシュな・・・というより気取りまくりな15分間で「彼らは大丈夫なのだろうかー」と一瞬思わずにはいられませんでした。

 
 6劇団がしのぎを削る15mmと違って、単発講演で一時間半から二時間もつのか、という不安を感じていました。
 15mmで演じたような、ほんの一瞬のすれ違いから東京に住む、どこにでもいる大学生たちの想像と現実を舞台にしていくスタイルが果たしてどんなふうに長編化されるのかに興味があったんです。

 今回の「パーティが始まる」は、王子小劇場で一週間の開催。
 僕が観たのは二階席でした。
 舞台はフラットな三角面を赤く区切って使用。四角くて白い箱が四つ、観客席の中にも数個の箱がおいてあります。椅子として使うんですね。

 音楽が大きくなって、舞台の上には青年と少女。青年の後ろには、もうひとりの青年がいます。音楽が浮かび上がると、少女は青年に「パーティにいかない?」と問いかける、その瞬間の困惑、観客席にいた他の俳優たちがざわめきはじめます。「ぱ、ぱぱ、パーティ?「パー」「パパ、パンティ?」「パンキー!」と叫びだす。
 大音量の音楽と、言葉たちの混乱。その困惑が、目の前にいる気弱そうな青年の、「パーティ」という単語に対する混乱だったということに気づくまでそんなに時間はかかりません。

 青年は大学三年生で、去年彼女に振られた寡黙で内気な男性。

 就活やなにかに追われて追われて、でもその追い込まれる日々についていけない。ちょっとだけ映画が好きで、ひょんなことから脚本を書いてみようと思い立つ。
 彼の後ろには、いつももう一人の自分がいる。二人とも左右で柄の違うシャツを着ています。
 
 もうひとりの自分はものすごく饒舌で、たまたま知り合った女の子を引き止めることもできるし、自分の作品の中にも入っていける。

 青年が現実世界で関わる人達は、青年が考える物語の登場人物でもあるようです。
 でも物語に出てくる二人の男性だけは、ちょっと違う。ひとりは探偵の男。もうひとりはコメディアン。二人とも、たまたま青年がちょっとだけ関係した人たちとおもしろおかしい物語を繰り広げるのですが、それは、青年が自分の周りにいる人達をモデルに話を書くからなんでしょう。男の子はいつも青年が成りたかった自分で、これから書きたかった物語。
 だから、物語のシーンでは、現実のシーンとは全然違う役回りで女の子がでてくる。
 もし自分と関係をもってくれたら、それはこんな物語の中で関係を持ちたかったんでしょうね。
 

 だから、そんな「もうひとり」の自分との/たちとの対話が、このお芝居のおいしいところです。都市で生きていてすれ違うたくさんの人たち。普段生きていて、ただすれ違うだけの他人たち。特に関係はないんだけど、何かのきっかけで気になってしまう人たち。関係はないんだけど、同じ街に生きてる人に対して信頼をもつなら、それは想像することによってだけ可能になる。
 
 青年はそりゃもう情けないやつですよ。ヘタレです。物語好きだけど、どこにでもいる馬鹿な男の子。大学三年生で地味に生きてて、どこにでもいるようなぼんやりしたやつです。だからこそ、そんな人達が生きている都市の中で、すれ違っていくような、一瞬だけ出会い別れていくような世界の中で関係をもつというのはどういうことなんだろうか、というのをTPCは考えています。かなり真剣に。

 家族劇でもなく、破天荒でもなく、ただ静かに生きているような普通の人たちが何を考えて何を信じていきていくのかを、粛々と描き出していく、と。そんな覚悟を感じました。対話劇が不可能の時代に、対話の可能性を、それでも模索するTPCの演劇はたしかに今の時代を切り取る野心的なもくろみだと言えなくもないでしょう。家族劇や政治劇がうまくうごかないこの世界の中で、もう一度誰かと関わっていくことを演劇で表すことができるなら、それはTPCの見せる演劇の中にあるのかもしれない。

 
 けれども、いかんせん地味な印象は拭いがたい!
  演出も抑制は効いていたけれど単調だし、想像の世界と現実世界との間の溝や「パーティが始まる」というタイトルと内容との齟齬。印象深いシーンもあるにはあるけれどそんなにはなくて、全体を通してたんぱくな演劇でした。
 だからこそ、青年の独白やたくさんの人の声が、ものすごく気取ってるように見えるんですよね。この気取りがたまらなくかっこいい、とも言えるし、それは問題の先送りじゃないかとも言えるわけ。TPCがこの作風をどう育て上げていくのかたのしみです。

 俳優陣は非常に力のある人たちがそろっていました。柿喰う客の村上さんは冗談抜きの実力派だし、青年の渡邊とかげ(クロムモリブデン)と前園あかり(バナナ学園純情派)の二人は本当に雰囲気がそっくりで驚いた。

 これからが楽しみでもあり、これからどうなるか不安でもあるTPC。その旗揚げ公演はスタイリッシュなかっこいい、そしてどこか情けなくて愛くるしい人たちの演劇でした。これを続けていくのか、ある段階でいきなりあらくれてしまうのか(笑)

 目が離せないなぁ。