その2

『Cross×Cross』

  • [http://skywalk.sakura.ne.jp/:title=GIFT]製作のコラボ本。A5、69ページ、単色刷りのオフセット。GIFTさんはいつもは『SkyWalk』という雑誌を作っているのですが、今回は趣向がちょっと変わった『Cross×Cross』という雑誌を作っていました。
  • 「はじめに」にあるとおり「2人の作り手が強力して、一つの作品を創る」というコンセプトであるらしい。「多様な「2人」による、多様な趣向をお楽しみください」とあるとおり、絵と文字で魅せるコンセプトがはっきりした作品です。
  • 「潮路」「まどろみ」「パーフェクトブルー」「人形」という四作品が主力。彼らがどんなジャンルについて、どのような作品が書きたいのか明確で、射程を適切に捉えて好感が持てる。
  • 個人的には短歌と写真の組み合わせの中原述・高根ゆん両氏による「まどろみ」はお手本にしたいぐらいステキ。フォントの凝り方も嫌味がなく冒険心にあふれているし、短歌のもつ風景と写真のもつ白黒の「暗さ」が実によくあっている。
  • こういうコラボ企画は誰もがみな考え挫折するんじゃないでしょうか。それでも絵師と文屋をそれぞれそろえるプロデュース力と実行力はがんばっている証拠であり才能と認めてもいい気がします。もう一つ、絵と作品との相性がいい。
  • どことなくBLの匂いが漂う青弥・杣木京「潮路」における軍服男性がページ越しに背中合わせに立つ絵や、三糸ひかり・杣木京「人形」の四つ割絵などは、文章の依存するリアリティを、絵がきっちり担保しているよい見本でしょう。
  • ただし、これが万人に向くかどうかはまた別の話かもしれません。万人に向けていないつくりを目指したのならば、読者層をきちんと狙うつくり、その点でも高く評価することができます。