第三回 こんどこそ本当にまとめをはじめよう! かつとんたろうが選ぶ書物編

とんかつ: っていうことでこの話はきり上げましょう(笑)。
たたた: そうですね(笑)。
たたた: では、とんかつ君的に、今年面白かった本とか映画とか音楽とか、なんかありますか?
とんかつ: とりあえず増田俊也木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』。これはガチ。

木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか

木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか

たたたクリルタイのリパさんも感激した、とんかつ君のレビューがうちのブログに載ってますね。
とんかつ: あのレビュー、というかアジ文は、自分の中でもかなり傑作なんじゃないかと思える文になったし、そこまで書かせたのは、やっぱりあの本の熱にやられたからだよ。あれは『ゴング格闘技』、略してゴンカクに四年にわたって連載されていたものなんだけど、連載の分量も、一度の掲載分は6ページないし8ページの三段組。むちゃくちゃだよね(笑)。
たたた: 『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』は701ページのA5版二段組ですものね。
とんかつ: いやー、暑いし熱いよ(笑)。
たたた: どういう所があついの?
とんかつ: 著者が柔道出身っていうのもあって、木村政彦にものすごい思い入れを持ってて、彼が敗北したというのを受け入れるという、著者自身の物語でもあるのが、最大の魅力だよね。まあ詳しくはひだらすの前のエントリを読んでくれ!
たたた: はい、広告までありがとう。他の本ではどうですか?
とんかつ: ええーとね、今年のホラ大はよかった。長編賞の『まなづま』は、あれで大賞とれんかったのが不思議でしょうがない。短編賞の『穴のようなものに入る』も、へんてこな感じでとてもよかったよ。
たたた: ふむふむ。
とんかつ: 『なまづま』は、今年のSFのベスト3には入れたい。マジ傑作。冷静に狂っていく感じと、対象への愛と、最後のどんでん返しで、もう最高でした。あとSFノンフィクションの方で、SF大賞の特別賞取ってたけど、横田順彌『近代日本奇想小説史 明治篇』は大作でした。狭義の小説だけでなく、未来予想をした本とかも紹介されてます。でもやっぱ、「滑稽小説 羽根子夫人」とかそういう中身のよくわからないような本でもSF/奇想小説だと思って発掘してきたヨコジュンの目の効き方は、はんぱないですまじで。あとは、『最弱球団 高橋ユニオンズ青春期』。 地味だけど、良書です。日本で唯一、個人が所有していたプロ野球チーム、高橋ユニオンズが存在した3年間を追った、ぐっとくるノンフィクションです。
なまづま (角川ホラー文庫)

なまづま (角川ホラー文庫)

近代日本奇想小説史 明治篇

近代日本奇想小説史 明治篇

最弱球団 高橋ユニオンズ青春記

最弱球団 高橋ユニオンズ青春記

たたた: 野球関係の良著ってことね。今年は「東京野球ブックフェア」とかも開かれて、野球本が注目された年でもあったように思います。
とんかつ:ちなみに、 高橋ユニオンズ最後の年に、新人としてかなりいい成績を挙げて、稲尾和久さえいなければ新人王を取れていたであろう佐々木信也は、湘南高校出身で、石原慎太郎のすぐ上の先輩だったはず。梅田くん、佐々木信也は、知ってる? 「プロ野球ニュース」でキャスターやってた人なんだけど。
たたた: ううん、知らないなぁ。
とんかつ: あの時代に、23時に視聴率10%程度をたたき出していたお化け番組だったんだよ。 いやぁ、プロ野球ニュースを知らないのは時代だなぁ(笑)。
たたた: すみません。スポーツ疎くっててへぺろ
とんかつ: えーとあとはごめん、おれもう最近さ、SF以外あんまり読まなくなちゃったから、他のジャンルの本をあげるのが難しいんだわ(笑)。SFでなら、海外モノでディレイニーの『ダールグレン』とかバチガルピ『ねじまき少女』なんか良かったよ。あと復刊物で、水見稜の『マインド・イーター』。これね。大事です。80年代日本SFのニューウェーブが到達したひとつの局地です。まじで。
ダールグレン(1) (未来の文学)

ダールグレン(1) (未来の文学)

ダールグレン(2) (未来の文学)

ダールグレン(2) (未来の文学)

ねじまき少女 上 (ハヤカワ文庫SF)

ねじまき少女 上 (ハヤカワ文庫SF)

ねじまき少女 下 (ハヤカワ文庫SF)

ねじまき少女 下 (ハヤカワ文庫SF)

マインド・イーター[完全版] (創元SF文庫) (創元SF文庫)

マインド・イーター[完全版] (創元SF文庫) (創元SF文庫)

たたた: 『マインドイーター』面白そうですね。ニューウェーブってことはけっこうインナースペース的な話、内省的な話なのかな。
とんかつ: そうそう。ニューウェーブってそうなのよね。とても内省的な小説です。あーあとあれ、西崎憲『ゆみに町ガイドブック』。超ハードコアな、ゆったりファンタジーです
ゆみに町ガイドブック

ゆみに町ガイドブック

たたた: ハードコアなのにゆったりなのか。
とんかつ: なんていうんだろ、この本のハードコアさって、物語がほとんど消滅しかけてる感じなんだよね。 おそらく著者が意図して、物語を構築することを拒否しているんだけど、 結局、小説である以上、ある程度物語化してしまうし、それに日常の中に異物がゴッツッと挿入される感じとかハードコアとしか言い用が無いです。
たたた: ふむ。なんだか興味深い。本以外はどうですかね?
とんかつ: いやその前に梅田くんの今年の本をたのむよ!