ボイスドラマのあれこれをめぐって。

 前回に引き続き、同人ボイスドラマ以下(VO)についてあれこれ書き連ねていきましょう。


 今回は、ボイスドラマのあれこれの紹介をします。

 それで、便宜的にボイスドラマの領域を、「オリジナルボイスドラマ」「二次創作」「企画型」「突発型」という風に区分します。あくまでも暫定的な分類です。
 
 多くのボイスドラマはこれらのなかで「オリジナル」に入るものが多く、また二次創作と半ばあいかねるものも少なくありません。企画型、突発型というものも、ニコニコ動画やYOUTUBE、あるいはpixivなどの投稿サイトが可能にした形態であろうと思い分割しましたが、コンテンツの内容的にはオリジナルとしてもよいでしょう。また、二次創作ではないにせよ「ネタのつぎはぎ」によって作られる作品は、*1オリジナルな脚本と演出で二次創作的なキャラや世界観の流用が見られずとも、オリジナルボイスドラマという響きに含まれるある種の感じを受けないだろうと思われます。


+オリジナルボイスドラマ  前回も少し触れましたが、圧倒的に多いのはこの領域です。巨大なリンク集に「ボイドラ・ON・AIR」があり、そこで800以上の企画が制作されたことが把握できます。*2。「ボイドラ・ON・AIR」の分類を以下に提示します。

▼ ファンタジー
▼ アクション・アドベンチャー
▼ サスペンス・ホラー・ミステリー
▼ 現代
▼ 近未来・SF
▼ 時代劇・歴史物
▼ 学園
▼ 恋愛・友情
▼ BL・GL
▼ ノンフィクション・感動もの
▼ ギャグ・コメディ
▼ シリアス
▼ ほのぼの
▼ オリジナル
▼ 版権物
▼ 和風
▼ 朗読
▼ CMのみ公開中
▼ その他
▼ ラジオ内ボイスドラマ
▼ CDにて販売中
▼ 年齢制限
 ▽全年齢
 ▽15禁
 ▽18禁
 ▽20禁
▼ 公開情報
 ▽完結済み
 ▽公開話数(1〜5)
 ▽公開話数(6〜10)
 ▽公開話数(11〜15)
 ▽公開話数(16〜20)
 ▽公開話数(21以上)

女性の製作者、同人文化に対する親和性が高い関係もあり、ネット声優たちが主に活躍しているようですが、普段演劇をしない人、あるいは役者、劇団劇作家の人達が脚本を提供するなど、多彩な活動が営まれています。多くの「ボイスドラマの作り方」のようなサイトで紹介されるボイスドラマは、この分類に入るものと考えます。複数サークルで展開する「企画物」や、期間限定で作成されるサークル、いわゆる「スターシステム」やプロデュース型サークル(プロデューサーだけがおり、あとは適宜人材を集めてくる形式のサークル)もあるようです。そうした状況では、ネットを使った演劇作品は「作品単位」で把握したほうがよいかもしれません。ただし、サークル単位で活動するケースも多くあり、彼らは一時情報を自ウェブサイトから発信しています。


++自ウェブサイト型
 自サイト型のボイドラは「企画単位でのサイト」と「サークル単位でのサイト」があります。多くは「サークル単位のサイト」から「企画単位のサイト」へリンクを貼るという形が多いようですが、これはボイドラに限らず多くのサイトがそうでしょう。いちいち紹介はしませんwww 

 「S−Scape」さんでも「めみゅっと」さんでもググルといろいろ出てきます。そのうちまとめて紹介したくもあるのですが、なかなか、どこを押さえてどこを知ればいいのかというのは難しい問題ですね。其の前にウェブ文芸誌カタログを作るのが先かもしれません。


++動画サイト投稿型
 自サイトをもたず、動画サイトに投稿し続ける人達もいます。動画サイトに投稿されたボイスドラマの多くは、公開されたあとに(勝手に?)「動画サイトに上げられるもの」が多いようです。また、動画サイトに予告版として掲載するケースが散見されます。たとえばこんなん。


あるいは「スタジオ風景」のようなメイキングシーンを掲載するケースもあります。


++CD販売型

 上の二つと同時進行で行うサークルが多いのですが、あくまでもCDでの販売にこだわるサークルもあります。音声情報そのものは動画投稿サイトにUPされてしまう(あるいはする)ケースが多く見られるのですが、CDというプロダクトに関していえば、通常のMP3よりも高音質で且デザイン性の高いものが提供できるということから、ジャケットやケースに(時にはデジパック仕様のものもある)こだわりを見せる人達もいます。
 
 しかし、CD販売の場所が、M3ないしコミケが多くならざるをえない。CD媒体にこだわりを見せるのは以下の二次創作型ボイスドラマもまた同じです。

+二次創作ボイスドラマ
++マルチコンプレックス型

 二次創作型のボイスドラマ、といった場合に、これもまた「何を持って二次創作とするか」というやっかいな問題にひっかかります。というのも、この形のボイスドラマは、いわゆるアニメやラジオといった俳優/声優が声を当てているものの二次創作はほとんど見当たらず、事実上、東方のボイスドラマがそのシェアを占めるのです。(というといろいろ問題があるのですが、暫定的にこういう言い方をしておくことにします。)
 そして、東方のボイスドラマは、自己増殖的な成長とCDなどのコンテクストから切り離されたニコニコ動画*3でいつのまにやら絵がついたり、あるいはその作品の二次創作が生まれたりするコンテンツ生成力を持っています。このコンテンツ生成力はサークル単位、あるいは作品単位、販売方式単位で固定化されがちなオリジナルボイスドラマよりも強力で、むしろ複合的なメディアに影響(サークルや作品単位を超えた影響)を与えてしまいます。そういう意味では、ある種の東方ボイスドラマは、作品がどのサークルのものでどういう作品群なのか、ということよりも、それらがさまざまなメディアで影響を与え共振していくことに意味を見出すことができると思うわけです。ある人はPVをつくりある人はCDをつくりある人はそれをM3にもっていきある人は同人誌を作る。一つのサークル単位というよりも、ある表現単位がいろいろな人の手によって流通していく、複合拡散型のカルチャーを形成する。――現在の二次創作ボイスドラマとは、そういう特殊なタイプのボイスドラマ領域であると思うわけです。

 ただ、東方ボイスドラマを中心に据えるサークルはそこまでたくさんあるわけではありません。東方以外にも、作家性や声優の力量でおすサークルもありますが、今ひとつそうしたサークルは評価されきっていません。もっと評価されるべきだとは思いますが、いろいろと敷居が高いのは事実でしょう。

-東方M1グランプリ 僕が『同人音楽.book-2009summer-』では書きませんでしたが、こうした「かってに育つ東方ドラマCD」――恐らくはボイスドラマ市場で最大級の認知度を誇る、ボイスドラマを無視することはできません。
 中でも『東方M1グランプリ』はいわゆる「ドラマ」ではないものの、東方キャラを使った声のお芝居としてはもっとも知られたものの一つだと思われます。
 

動画のチョイスは適当……。いうまでもなく「東方M1グランプリ」はもともとサークル「いえろ〜ぜぶら」の漫才CDなわけで、動画はついていません。漫才としての完成度の高さ(いささかハイコンテクスト過ぎて、東方をそれなりに知ってないときついのですが)といい、声優のちょっと抑揚のある演技といい、そのまま聞いてもおもしろうございます。

-幕間劇
 とはいうものの、恐らく東方ドラマCDで一番多いのは、音楽CDの幕間劇でしょう。サークル「IOSYS」のCDが音楽を中心としながら、3〜5編ほどの東方キャラによる幕間劇が挿入されていることに象徴的ですが、東方ボイスドラマとは、音楽CDの表現形態の一つともいえるわけです。

これもCDの幕間劇のひとつ。

次回に続く。其の前に手直しをするかも。

*1:実は実際の小劇場で行われる演劇もネタのつぎはぎだったりするものが多いのですが

*2:バイアスがないわけではないのですが。

*3:東方というカルチャーの多くがそうであるように