内容紹介1

5月6日の文学フリマで公開される『S.E.VOL4』について、その内容をたたたさんが紹介していくコーナーだよ。

辺陽川「本文と格闘する」

宮沢賢治は欲望の対象だったといっていい。というより、「宮沢賢治」とは当人の不安定な生活や生き方に見合わないほどの過剰さを、死後読者たちによって背負わされていた作家だった、といったほうがいいのかもしれない。もともとは宮沢賢治研究を行い、今は関西にすむ辺陽介(もちろんペンネームです)の論考、「本文と格闘する」は、とにかくそうした読者の「欲」から離れることを提唱する。

 そういえば宮沢賢治とは奇妙な人だった。童貞だったり、妹萌えだったり、鉄ちゃんだったり、農業マニアだったり、挙句の果てに鳥シャーマンであるとゆう。先行研究や評論の数々は、宮沢賢治の「出版されたことのない」テキストの上に読者の自画像を塗り重ねる作業を展開してきた。辺の論考は、この作業をやめ、まずは宮沢賢治の「本文」、つまり私達が「何を読むべきか」を徹底して考えぬくことが必要であると論じるのだ。

もちろんそれは近年の宮沢賢治研究の動向でもあり成果でもあるだろう。『【新】校本 宮沢賢治全集』における徹底した本文研究、そしてそれを利用することで見えてくる新しい賢治作品の「読み」を行う。
 着実な研究成果を踏まえてこそ、大胆な解釈が可能になるのだ。そして、いま宮沢賢治を見据えることの重要さを魂へと訴えかける好論文だと僕は思います。

新 校本 宮澤賢治全集〈第11巻〉童話4

新 校本 宮澤賢治全集〈第11巻〉童話4