第九回 そして最終回まとめ、あるいは自分たちの話

たたた:ここまでほんっとに取り留めなく話してきましたが(笑)、そろそろまとめに入りましょうか。
とんかつ:しかしこれをまとめるのって、どうやるんだw 一年を総括するって、とても乱暴だと思うんだけど、やる意味あるのかしらw 結局さ、こんなことあったね、で終わっちゃうような気もするので、これを踏まえて2012年、何を考えていこうか、的な話をしたほうがいいのかな?
たたた:うん、それでもいいと思うよ。
とんかつ:そうねえ、じゃあ具体的な話のほうがいいよね。我々の立ち位置の話とか、2012年どうするかとか、新刊の話とか。
たたたステルス・マーケティング臭が全開ですが(笑)、そういう話もしましょうかねぇ。えっと、私たち【左隣のラスプーチン】こと【ひだらす】自体が立ち上がったのがおおよそ三年前で、特にさしたる目標もなく漫然と活動してきたわけですが、そろそろもうちょっと違ったことを始めてもいいかなと思ったんですね。
 それは「目標をもつ」ってことと「もっとみんなの意見を反映」するってことかな。前のエントリでも書いたけど『これからの文学フリマの話をしよう!』 ってサンデル丸パクりのタイトルである文フリ公式本で、SF評論家の藤田直哉さんが「文学フリマにでてるサークルたちは、その次のステップが見えない」ってゆってたんだよね。そこらへんには少し答えてもいいかも、と思い始めてます。
 今までに『S.E.』『S.E.2』『S.E.3』と作ってきて、いわゆる仲間内の同人誌としてはほとんど完成の領域に達した(笑)と思っていて、去年末に出した『S.I.』は音楽社会学者の井手口先生や歴史学者の田中希生さん、ツイッターアイドルのにゅるんさんたちにも書いてもらってて、内容的なクオリティって点ではひとつの頂点にキタなぁと思ったんだよね。
 『BOLLARD』は【カトリ企画】と協力して演劇について、射程は狭かったけどかなりコアな本を作れたと思う。そういう意味では文章系サークルとしての【左隣のラスプーチン】は成熟期にきたなと思ってます。と、同時にひだらすが相手にできる市場の範囲も見えてきてしまった。 で、この成熟期に何か新しい展開はしたい。趣味のたんなる文章サークルでいいのか? という思いは常にあって、そこらへんを更新する手をそろそろ考えたいなあとは思っています。
 もう一つが、いままで僕がほとんど独断的にトップダウンでやってきたことの反省もあるんですよね。雑誌は一人で作るものだと教わったって、とある著名なフリーライタートークイベントで聞いてたりして、僕もそう思ってるんだけど、正直負担が大きすぎて、活動できない時期のほうが多くなってしまった。同時に、やっぱりみんなの心が離れてしまったのもあると思うんだよ。金銭的な負担も正直ゆってなくはない。ずっとお金出してくれている同人の方もいて、本当にありがたい。
とんかつ:うん、ぼくが持ってるひだらすに対する認識は、梅田くんがコンセプト作って近しい仲間に原稿を依頼する、みたいな感じで、いわゆる「同人サークル」とぼくが思っているものとは、ちょっと違うかな、という感じがする。でもまぁそうやって個人が主導していかないと、長く続きづらいだろうっていうのもよくわかる。だから次のステップというのは、やっぱり明確な目標と、それを同じ熱意で持てる仲間が前提として必要になるよね。梅田くんから、企画どうしようか、というはなしをもちかけられたときとか、あんまりうまく返答出来なかったりまじめに考えなくて、申し訳なかったなぁというも、ぼく個人の反省としてはあります。
たたた:昔、これもとある著名なフリーライターの方に「お金ナシだと3年以上は続かないよ」といわれたことは残ってる。実際には「お金」だけじゃなくて、信頼とか達成感とか前進感とか、そういうものなんだろうけれど、続けていくならやっぱりそろそろ「前」が必要になると思うのね。普通の出版や印刷やコンテンツの「業界」が思い描く未来とは少し異なるビジョンがね。これで食べていきたい、みたいな目標があるわけではないんだけど、でもそこまでいかなくても【ひだらす】自体のビジョンを明らかにすることで、前進するためのとっかかりを作りたいっていうのはあるなぁ。ただ、文章系において「先」ってどこだろうっていう疑問は強くある。
 もう一ついえば、仲間たちとの距離感っていうのは悩むことがあるよね。原稿を依頼するだけっていうのはある意味では気楽なんだけど、運営や方針にまで関係してもらうとなると、負担も大きくなるし、その負担に見合っただけの報酬系は僕にはとても用意できないし・・・。
とんかつ:だからこその、熱量とコンセプト、目標の共有が必要なんだろうけど。んで、そういうのを共有するために、みんなでぐだぐだたまれる場があったらいいよね、ということは思うよ。我々はあまりにも、同人間での交流が少なすぎるとは思いませんか?w 現在いる同人で、なかなかそういう核になる目標だったり熱量とかを共有出来る人が少ないのであれば、新しい同人入れたほうがいいだろうしさ。
たたた:現在の同人の数も正直何人いるのかよくわかんない(笑)。溜まり場はほしいね。来年の目標にしよっか(笑)。今のメンバーもすごく熱心にやってくれてると思うけれど、うーん。たしかに、交流は少ないかもね。っていうかそれならとんかつくんも文フリちゃんときてよっ!(笑)。
とんかつ:いやほらぼくさ、仕事が土日関係なくあるし、これでも出来る限り調整してたんだぜ!(笑)
たたた:うむ。我らの活動は微妙にそこがネックだったりするんだよね。仕事の合間をぬって人生を豊かにするのって意外と難しいからさ(笑)。
とんかつ:ね。小峰も仕事めっちゃ忙しそうだし、デザインやなんかで協力してくれた伊藤君もなかなか動けそうにない感じだしね。そういう中で何かを共有していく難しさっていうのはもちろんあるんだけど、それでもなんとか月に一度でも、会って話す機会があれば、ぜんぜん違うんじゃないかという気はするよ。
たたた:全然違うのかなぁ(笑)。ただ、学生の頃とは違うなぁって思いますよ。部室がないっていうかさ。ツイッターSNSではどんなに頑張っても部室の代わりにはならないんだよね。もちろん、やっぱり本業としてはいいものを書く/書いてもらうことだと思うから。いい本を作るってことが一番の目標ではあるよね。
とんかつ:まあこんな内輪話を延々としててもしょうがないか(笑)。これはまた近く、企画会議めいた何かをやるとして、次の我々の新刊、こないだちょっと話したやつのことを、宣伝がわりに少ししゃべっときません?
たたた:ますますステマ臭が(笑)。ただ、ひさしぶりに新刊は『SE』のブランドでだそうかなと思ってます。震災のころにいろいろあって「あ、文学のやつらやっぱだめだ。演劇のほうがいいや」と思ってしばらく文学を敬遠してたんだけど、最近思い直して(笑)、基本に返って「文学」をテーマにつくろうかなと思ってます。もともとは「初めて出会う文芸誌」がコンセプトの総合的雑誌を目指してからさ。新しい文芸、創作って枠組みにとらわれなくても「文学」という大文字について考えてみるのは意味があると思うの。それこそ、話の最初にあった遅レスのあり方でもあるだろうしね。
とんかつ:うん、初心に立ち返って、というか、最初にぼくと梅田くんを結びつけたものは間違いなく「文学 / 小説」だったはずだし、他の同人にしたってそうだった人は多いと思う。『SE vol. 2』の「文学」に関する同人同士の鼎談とかも、やってるこっちがわもとても楽しかったしね。個人的に2011年は、北杜夫が死んだ、っというのが大きくて。ぼくの中で特別な思い入れのある作家で、彼の作品について何か書きたい、という欲望もあったので、個人的にも、ひだらすが自分たちの立ち位置を作りなおすという意味でも、「文学」っていうのは意味あるテーマだと思う。
たたた:「文学」っていうテーマに意味があるかどうかわかんないけどさ。みんな文学が好きだったわけだし、それなりに言いたいこともあるわけだし、おもしろい作品にも出会いたいわけだよね。そういう意味では一番同人でやるこのメリットがあるのが「文学」だと思ってる。ただ、これをやったらもう「文学」っていう特集は使えないかもね。
とんかつ:それでもいいんじゃない。ここでひだらすの軌道修正なりなんなりしないと、ひだらす続けていくの自体、梅田くんの負担も相当なものだし、崩壊というか自然消滅的にフェードアウトする可能性だってあると思うし。それを考えると、読者云々ではなく、「我々」の好きな文学、っていうのを今やる価値はあるよ。あくまでも、我々にとって、だけどね。
たたた:そうだね。まぁ自然消滅的フェードアウトもそれならそれでいいかと思うけれど(笑)、まだまだやってみたいことはあるからさ。しばらくは続くと思うよ。
とんかつ:とりあえず企画会議だ!(笑) ということかな。
たたた:ですね!