ゆりいかさんの問題提起から

ゆりちゃんのUST「文学フリマとか古本まつり」
http://www.ustream.tv/recorded/18301760

ここの一時間12分ぐらいのところから、文学フリマ(だけなのかな?)で購入した作品群をソートして、共有できるアーキテクチャーが提案されていました。チャットなどでは「ソーシャルリーディング」という形で提案されていましたが、これ、実はとても重要な問題提起だと思ったので、少々書いておきます。

ISBN等の管理番号をもたない同人作品において、そのデータベース化や目録整備は、困難を極める作業です。これは、itune等に登録されていないタイプのボイスドラマやオーディオドラマなどといった音声のものもほとんど変わりがありません。あるいは、「作られては消えていく」小劇場演劇、インディーズ映画などにも共有する問題であろうと思います。文章系同人だけの問題ではありません。

しかし、少しマジな話をすれば、「同人音楽」と「小劇場演劇」はそれぞれに異なったアーキテクチャの存在によって、この問題に一つの光を当てているのです。

一つは同人音楽の半網羅的なデータベースである「同人音楽.info」です。
http://www.dojin-music.info/

これは、管理人のみやわさん及び会員の人々が持っている同人音楽のCD情報を収集するデータベースです。
データベースとしての使い勝手はともかく、作品/サークル/作者などのレベルごとにソートが可能で、極めて早い動作性と検索性を持ち合わせています。
設計自体はそれなりに古いものであると管理人自身も言っていましたが、基本コンセプトとしての同人音楽のデータベースとしては極めて強力な検索ツールであるということができるでしょう。そして、この「ツールである」という点、他の「コレクター・ブログ」とは大いに性格が異なります。つまり、ある人が収集したものがその「同人音楽」の全ての作品であったとしても、整理構成されていないデータは使えないのです。同人音楽に関して、このような整理されたデータの形で入力ができるシステムがあること、非常に重要なことであるでしょう。

小劇場演劇においては、「CoRich舞台芸術!」というアーキテクチャが存在します。
http://stage.corich.jp/index_now_stage.php

こちらは、公演をSNSの形で登録/チケットの予約/観劇の感想等/ランキングといった統計処理を可能にしています。コリッチについては別のところで特集を汲む予定があったりするので、まあ概略だけ。

両方に通じるものは、SNSとデータベースという違いがあっても、今まで雑多かつ流動的に消費されてきたプロダクトに、「ナンバリング=ID処理」を行った点だと思います。文章系同人のデータそのものは、実は相当数の蓄積がありますが(個人サイトやブログ等。実は刊行点数も他の同人に比べてそれほど多くはない)、結局、いままで、「ナンバリング」を可能にしたアーキテクチャはありませんでしたし、それらを利用してランキングや作者に紐付けたアーキテクチャもありませんでした。比較的近い働きをするであろうものに「破滅派」さんがこれから始める予定の「ミニコme!」がありますが、販売サイトという点から、コリッチやニコニコ動画のような激しい盛り上がりは目的ではないでしょう。

 これはなぜかといえば、作るのが面倒とか需要があるのかわからないとかありますが、基本的に「文章系」に興味があるエンジニアがいないということに付きます。あるいは、「文章系」でエンジニアな人はそれこそすごい数いると思いますが、彼らが自分の小説をみてもらいたいあまりに、自分たちの技術が誰かに必要とされていないと気づかないことは、とても悲しい事です(半分私信)。

 ゆりいかさんの提案されたこのアーカイブ機能をもつアーキテクチャの構想は非常に面白いものだと思います。文芸同人にはその感想を言い合うサイトがいくつも乱立したり、いまでもいくつかありますが、作品にIDを割り振り、データとして利用できるデータベースとしての機能をあわせもったものはありませんでした。
 
 今回も文学フリマの感想などがあげられていますが、それらがブログに分散して存在しても、ひとつの巨大な「文章系」のコロラリーを形成するのは難しいでしょうし、もちろんそのような区分に入ることを拒む人たちもいるでしょうが、そろそろ、そういうことを考えてもいいんじゃないでしょうか。なんか面倒になったので、今日はこのへんで。