作者本介インタビュー!

かつては自作自演団ハッキネンとして謎のチラシ(あれ)と得たいの知れないパフォーマンスで人気を集め、現在は演劇集団「ジエン社」を牽引する作者本介がWeb.S.E.に帰ってきた!]

紙媒体の『S.E.』においても二回の掲載、折り紙つきの実力をもつ作者本介が、ジエン社第三回公演「ゴーストニートペアレント」で戦う敵とは何なのか! 現在高円寺明石スタジオにて絶賛公演中の作者本介に突撃取材を敢行!(ただしメールで)

雑談まじりのトーキングにもがっちり主張を織り込んできた緊迫感あふれるインタビューがいま、はじまる!

ジエン社、第三回公演「ゴーストニートアレント」の公演が迫ってきています。これまで、作者さん=ジエン社ではelegiri.netのインタビューでも答えていたとおり「やる気がない」という立ち方を軸に据え、「モテない」「金がない」「人と話をするときにキョドる」などを扱ったワークショップもやっていましたように記憶しています。独自の演劇観と、変な言い方ですが教養と伝統と新しさと社会と働きたくない願望の間でずっと悩み続けていた演劇を続けてきたのがジエン社だ、と僕は思うのですね。

そして、ジエン社の演劇は、高いエンターテイメント性とオリジナリティをもちながら、社会から逸脱してしまう弱いモノたちの物語であったように思います。今回の作品は、いったいどのような仕上がりになっていますか?



A.本作『ゴーストニートアレント』は、「ベタとの戦い」を想定して書きました。具体的な敵は「セカチュー」です。
近年、まことしやかに「ベタ」の復権が叫ばれており、大作映画でも最近はためらいなくベタのど真ん中を恐れなくなったな、という感じです。
が、ベタって、大勢の人を泣かせたり、笑わせたりするために、あらゆる細かさやマイノリティを排除しているようにも思えるんですね。また、劇の登場人物を、時にためらいなく殺したりする。
そこに引っかかるものがあるのです。なにも泣かせるために、人を殺す必要があるんだろうか?また、「面白い」と呼ばれるものは、起承転結に寄らなければならないのか? もっといえば、もう「面白い」ものは、いいんじゃないだろうか?そんなものより、描かなくてはいけないものがあるんじゃないだろうか。
それを目撃する人が少ない「小劇場演劇」というメディアならば、「ベタ」で「面白い」ものから、もっと自由になっていいのではないか、とも思うのですが。

で、今回、やろうと思ったのは「恋人が死ぬ」というベタです。
このベタに抗うため、私たちは「恋人が死ぬ話なのに、なかなか死なない」という感じで作ってみました。抗ってみたいです。


――なるほど、ジエン社のHPには、早稲田大学で「自作自演団ハッキネン」の頃から続けておられた「気になる一言」が掲載されています。僕はこれの大ファンなんですが、これは今後、もっとどこかで見ることはできないのでしょうか。

「あれ」ですね。今のところは「あれ」の展開は、考えていません。
そもそも「あれ」に対して、適切な名前が思いつかないんですね。「手書きの張り紙」では何だか分かりませんし、「一言ネタ」って、ネタじゃないし。
「詩」なのかとも考えましたが、手書きにしなければ弱い、というのもありますし、じゃあ「習字」かと言われれば、明らかに違う。習字なわけないだろうって。
まずは「あれ」に対していい名前を思いつかなければ。今後の展開は、きっとそれからです。

――最近どうですか?

地獄に仏です。


――なるほど。ジエン社が採用する俳優は、三人に一人は挙動不審な動きをしますが、なぜですか。



世界の全人口の十人に一人は、銃を個人所有していると聞きます。同じように、三人に一人くらいは挙動不審な動きをしていても不思議では無いと思います。

――ジエン社の採用する服装で、一人はかならず頭がおかしいファッションをしてる人がでてきますが、これもなぜなのでしょうか。


高校二年のころ、「赤ぶちめがね」を普通にかけてきた女子がいて、ひっくり返りそうでした。こいつは頭がおかしいのではないか、と内心お祭り状態だったのですが、周囲の人々の反応は普通でした。いまだに僕は、ファッションとしての「赤ぶち」はおかしいと思っていますが、どうなんでしょう。あれは漫画の世界じゃないか。
はたして「赤ぶちめがね」は許されるんでしょうか? あれ、頭がおかしくないか?
まして「ミニスカの下のパンタロン」、「メイド服にネコ耳」、「I love New york」「クリスマス会でのとんがり帽子」とか、言語道断もいいところだ。どうして世間の人間は、たいして好きでもないくせに「I love New york」とプリントされたTシャツを許すのだろう。
こっちが逆に聞きたいくらいです。




――小劇場演劇ってなかなか一人では/ハジメテの人には、来にくい場所だと思うのですが、興味はあるけれど行ってみたい人も多いと思うのですね。その人達に何か背中を押すコメントをください。

小劇場は、その他メディアでの娯楽とは違って、死にたくなったり、見に行った自分を八つ裂きにしたくなる、というような現象を味わう事ができます。つまらなかった時の衝撃や後悔が、並大抵のものではありません。
そんな稀有な体験が、それほどの経済的損失をしなくとも体験でき、なおかつごく稀に面白い公演を見ることができるかもしれないというオマケまでついてます。遠くの遊園地のおばけ屋敷に入るより、よっぽど効率がいいと思います。


――一時期はyoutubeでおもしろ動画を探しまくっていた作者本介さんですが、なにかおもしろい動画を教えてください。

  • 俺んち水没


水没した自宅を楽しそうにレポートしてます。
ちなみにこの動画の人はネット上に面白い事をやっている動画を作る事で少し有名な人のようですが、この人を見ていると、面白い事をしようとしている人は、必ずしも面白い訳ではないという事が良く分かり、勉強になります。

あと、ニコニコ動画にある土嚢動画がおもしろいですね。

  • 世界最高の技術 DONOU


D


土嚢がね、格好良く紹介されているんですよ。これはすごいです。

――僕も実は土嚢動画大好きなんです。さて一時期は早稲田界隈の演劇批評で嫌われ者になっていた作者本介さんですが、演劇の批評は「実際に見る」ことの難しさも含めて非常に難しく、同時に大切なことのように思います。批評というのは作者さんの中でどのような位置を占める営みだったのでしょうか。



僕が演劇の感想を言うときは、批評ととらえてはいませんでした。批評は、きっともう少しグレードが高い作業だと思っています。たぶん、資料か、なんか、こう、教養というか、そういう奴が必要なのだろうなと思っています。僕の場合は「悪口」です。まだまだ僕には、演劇に対する教養が足りない。

ただ「悪口」を言うためには、自分の中で「善悪」というものが無ければ出来ない。そのため、僕にとって悪口というのは、自分の中の演劇における善悪を知る、という作業でもありました。だから他人への悪口を言うにつれて、自分の中でやりたい演劇、善の演劇を見出していたのだと思います。
これって、意外と表現者にとって自分を知るためのいい方法なんじゃないでしょうか。小説書きになたい人は、嫌いな小説の悪口を延々書いてみる、とか。いい分量の悪口を100本くらい書けば、自分の中で書きたい小説とかが見えてくると思います。おすすめです。


――ゴーストニートアレントと、そのほかの告知があったらお願いします。


ジエン社は三月にMrs.fictionsが主催する『15 minutes made』という、短編演劇大会みたいな奴に出演します。15分間の短い芝居です。
ジエン社のほかには、「東京ネジ」や「青☆組」など、ジエン社より一回り上の実力を持つ有力劇団が多数参加。中でも僕が注目しているのは、「DULL-COLORED POP(ダルカラードポップ)」という団体です。この人たちの世界観が渋いんだ、これが。
この人たちと戦えるのが、かなり楽しみです。
場所は池袋シアターグリーン「BOX IN BOX」にて。
3月12日〜15日です。
詳細はこちら
http://www.mrsfictions.com/


インタビューNO 002 作者本介

  • 名前:作者本介
  • ジョブ:脚本家、劇作家、俳優、そのほか。
  • 所属:ジエン社(主宰)
  • 歴史:高校時代より演劇に携わる。早稲田大学第二文学部に進学後、一人劇団「自作自演団ハッキネン」を開始。大量の張り紙に一言ネタを書く芸風が話題を呼んだ。多くの学内演劇集団の「悪口」を書いた。宮沢章夫らに影響を受け、当時から脚本の提供、俳優、演出などをこなす。早稲田大学演劇博物館とジャニーズとの合同企画「@The Globe Project.vol2」に脚本「宇宙怪獣何もせず帰る」で参加。賛否両論の嵐を受ける。2006年には、第二文学部の雑誌集団グラミネが主催する、小説『白痴をやる』でグラミネ文学賞佳作入選。飲み会にて現在の「左隣のラスプーチン」のメンバーの数人と知り合う。2007年より、劇団としてジエン社を立ち上げ演劇活動を展開。第一回公演「無抵抗百貨店屋上遊園地」、第二回公演「大怪獣サヨナラ」を実施。高かったり低かったりする評価を受けながら、ベタと戦い続ける日々の、次なる戦場が第三回公演「ゴーストニートアレント

http://elegirl.net/jiensha/

ジエン社HP。作者本介の細かいあれこれはここでわかったりわからなかったり。「ジエン社」のロゴをクリックすると「あれ」が現れる。

http://blogs.yahoo.co.jp/hacki_nen/
古くは観劇の悪口。今は告知やら旅日記やら、今なにを考えているのかなどをつれづれとつづりながら、文章が面白くて読ませる読ませる。

リファレンス

ジエン社
第三回公演
「ゴーストニートアレント

「『ニート』と口にするとき、
『ニー』で顔は笑う。
『ト』で現実に戻る。」

作・演出:作者本介
日時■2009年2月19日〜22日
場所■高円寺明石スタジオ(東京都杉並区高円寺南4-10-6)

彼女が余命一年と宣告されてから、既に三年がたつ。
入院費の関係で自宅療養を余儀なくされたまま彼女は二年間、何もしていない。
僕も僕で働かず、彼女のほかにもう一人彼女(その2)をつくり、
彼女が死んだら彼女(その2)にシフトする準備を、粛々と進めていた。

窓の外から見える「東京」は、アパートに隣接する桜の園の花が満開になる一時期だけ、花に埋もれてかき消えるが、今年の冬も桜に花をつけさせることは、どうしても出来なかった。

そして生活費はついに打ち切られた。
しかし登場人物全員に、やる気は無かった。

「私たちはゴースト
何もしないゴースト
ただ笑っているゴースト」

  • 出演
    • 伊藤淳二
    • 梅舟惟永(ろりえ)
    • 遠藤友香理
    • 大重わたる(夜ふかしの会)
    • 片飛鳥
    • 兼桝綾
    • 萱怜子
    • シオミダイキ(贅沢な妥協策)
    • 清水穂奈美
    • 早崎修司(マグズサムズ)
    • 横山翔一(お前と悪戯酒)
    • 善積元
  • チケット料金
    • 前売り 2,200円
    • 当日2,500円
    • ブロガ―割引  2,000円
  • チケット予約ページ

チケット予約はこちらから。
(文責 安倉儀たたた)