ボビボビ「2980!!」@下北沢・小劇場楽園

 ソワレにある演劇を見に行く日だったので、せっかくだからマチネも何か面白いのやってないかなーという不純な動機で見に行きました。
 

 劇団ホビホビ、第二回公演とはいうものの、主催はハラホロシャングリラに20年いたベテランの山本佳希、脚本ははらぺこペンギンの白坂英晃と、すでにクオリティは約束されていました。
 全体的に渋くダンディな感じです。

 
 副題に「AV女優を娘にもつ父親の話」とあるとおり、年甲斐もないおっさんたちが、AV女優になってしまった娘を取り戻すべく悪戦苦闘するという、ハートウォーミングで暑苦しいコメディでした。壁面をバーカウンターにして、対向壁面をソファにするというやや変則的な具象美術ですが、難しいこたありません。


 
 開幕、腕立て伏せ一万回を達成する熱血男のバーのマスターのところに、悄然とした一人のおっさんが訪れるてお話が始まります。
 ただの狭いバーカウンターに三匹のおっさん(ワンツーワークス奥村洋治、タテヨコ企画ちゅうり、チャリカルキビーグル大塚(たぶん。もしかしたらBroaderHausUnitの岡見文克だったかも))がいるだけなのだけれど、さすがの芸達者で見ていてぜんぜん飽きない。パワフルさというよりも器用な出力調整で魅せる持久力のある演技は、一時間五〇分たっぷりある上演時間を短く感じさせました。



 また、脇をかためるDart’sの島田雅之、はらぺこペンギン!の立浪伸一はコミカルな役回りで存分に存在感を発揮してます。女優さんもすてきでした。AV女優の女性を演じた野上梨佳は硬さが目立つものの、どことなく淫靡な清純派とゆう感じでよかったです。



 本はいろんな要素を盛り込みすぎで若干の混乱がありました。「笑いどころ」や「泣き所」をうまく作れずに冗漫なシーンが続いてしまったり、単純にギャグが長くて寒かったり、会話のかみ合うタイミングが悪くて理想的なテンポが作れなかったようにも感じられました。また、話の結構そのものが、しょうもないところもあってインパクト不足も少し感じます。
 展開もかなり急で唐突、もう少し一人一人を掘り下げてほしかった。



 また「AV女優を娘に持つ」という設定が物語上で存分に生かし切れていませんでした。観客としては、もうちょっとあれやこれやを期待してしまいます。


 そうはいっても舞台に登場するキャラクターは魅力的で、普段は気弱だけど熱血でお節介なバーのマスター。厳しさをまとっているのにいつもまにかむっつりな自分に気づいてしまう学校の先生、詐欺師のアルバイター、日本語も英語も通じないAV男優と、なんだかちょっと笑ってしまうような人々がはつらつとしている姿をみるのはとっても気持ちがよいものですし、うまい俳優がやるならなおさらです。


 しかし、なんといってもこの舞台の魅力は、おっさん力、とでもいうべきものでしょうか。ときおり空回りするけれど、若手にはない器用さや不器用さ。燃え上がるようなお節介の間に、ほろりと悲しくなるようなテンションを味わいたくなったらどうぞ下北沢の楽園まで。

 本日初日で、五日までの公演です。