シベリア少女鉄道スピリッツ「太陽は僕の敵」@座・高円寺。


**ネタバレないはずですが、御覧になってから読まれることをオススメします。



 ツイッターで萱さんという女優さんが「いまからブラジルいく、定期圏内でブラジルいけるとか、ブラジルも近くなったもんだぜブラジル」みたいなことをいっていたら、辻本直樹さんというかたが「僕は来週シベリアいきます」と返事をしていたのを横目に見て、ブラジルとシベリアが一緒にくるなんて、世界も小さくなったもんだとしみじみ実感すること三日。実は『演劇村フェスティバル』というそれこそ世界の狭さを実感しそうな座・高円寺でやるお芝居のことときいて、ブラジルはいけなかったけれど、せめてシベリアは見てみようと思い立ち、先週の中頃、あわてて予約を入れたしだい。

シベリア少女鉄道スピリッツ「太陽は僕の敵」である。
http://www.siberia.jp/



 座・高円寺の二〇〇人以上はいりそーな巨大な客席は、ほぼ満席。イヤがおうにも期待が高まりました。ネタバレは最小限に、感想を書いておきませう。





 最初はオリエンタルファンタジー。べたつくほどにベタベタな芝居で、アラジンがでてきてアリババもでてくる。聞いてるだけで全身がむずがゆくなってくるような、素直で、実直な児童文学か! それを楽しむことができる子供たちはもちろん、平日の夜に座・高円寺まで足を運んだりはしないわけ。
 ただ、これで終わったらさすがに入場料返せよと思ったそのときがすごい。そのせいで一時間半近く費やしてきたオリエンタルファンタジーの位相ががらりと姿を変えてしまうのだが、そこの仕組みが楽しめるかどうかは、多少人を選ぶかもしれない。でも僕はもう、一発でやられてしまった。まったくもう、反則技のオンパレードだぜ。



 そんなわけで、ぶっとんだ祝祭感あふれる舞台なのだけれど、そのテーマは意外と深い・・・のかもしれない。大迷走に迷走を重ねたあげくの自己決定批判だとか、ものすごい遠回りした原子力批判(こんなに遠回りした非難は初めてみたよ)だとか、信じられないぐらい寄り道したあげくのネオリベ批判だとか、メタシアトリカルな俳優論だとか、なぜだかいろいろと深読みをしたくなる芝居だった。たぶんそれは、僕が妙にいやらしい大人になってしまったがために単純明快で勧善懲悪(風)のファンタジーをそのまま楽しめなくなってしまったからかもしれない。そこはなんだか、自分のことだけど寂しく思うってしまったけれど、にやにやしながら後半を楽しんでしまえば問題はないでしょう。



  おどろくほど繊細な照明・音響オペーレーションや、舞台上の小道具を次々に転換していく手腕はなんともいえず巧みで広闊で、舞台の上だけで舞台ができてるわけじゃないんだなぁとしみじみ実感した。

 もちろん、見所あふれる俳優たちもすばらしい。広いホールなので若干声が通らないシーンもあるけれど、男たちは元気いっぱい、女の子はきれいにしなやかに美しく演技をしていた。とりわけアリババ役の子のたおやかでボーイッシュな発声と、一番最後に出てくる例の彼はいつもながらに輝いていました。拝みたくなっちゃったよ。




 それでも、全体的な単調さと冗漫感はいなめない。後半部分では俳優たちも少しサボリ気味に感じた(これは心の底から残念だった。でも次のステージからは気合いを入れ直してくれるだろう)。


 
 たぶんチケット予約は売り切れ。でも当日券がでているかもしれません。今週いっぱいです。