ハイバイのDVDから

僕の通っていた大学には「映像演劇」というくくりで学科が立てられていて、言い方は違っても基本的にその2つは似ているものか同じものと考えていた時期があったのだろう。
もちろん、文化には親和性が高いものと低いものがあるから、それはたぶん間違いではない。俳優が嘘をつくとか、舞台の上に人がいるとか、そういうものとして演劇も映像も似通ったところがあるんだろう。

【ハイバイ】*1、という岩井秀人さんが主宰する青年団系の劇団がある。最近演劇のDVDをいくつか見る中で、比較的観賞に耐えうるものの一つだなぁという気持ちを強くもった一枚だ。

http://hi-bye.net/07dvd.html

作演の岩井秀人自身が編集プロダクションまでいって編集に口出しするというこだわりようがあるらしく、ある一点からぼんやりとっただけの劇団DVDとは一線を画している。そして岩井秀人が演劇のことについて本当によくわかっているなと思うのは、「話している人」を常に観ていたいというわけではないということだ。とりわけハイバイのような、ひとつの出来事が同時に、違う場所で、しかも別のタイムラインで起こるような演劇ではなおさらだ。
 もちろん、基本的には話をしている人たちの部分へと焦点を当てるのだけれど、ときおり、沈黙を守り、口を結んでいる人だけが映し出されることもある。そんなことに少しだけ驚いたりもする。

 沈黙することが何かを雄弁に語ることがある。映画でも演劇でも、実人生でも同じことだけれど、その沈黙を見続けることはなかなかに厳しいことではあるのだなぁと思い続けていた。映像に固定されてしまっていなくても、演劇では同じ空間に、たくさんの人がいるのだ。

 ハイバイは来年1月に新作。
 

*1:劇団名は【】で囲むことにしている。特殊な用法だけれど、慣れて欲しい。