ろりえ番外夏公演「暖かそうな場所」
あいさつ
みんな強がりで不器用でプライドが高いからさぁ(笑)
梅舟椎永
ちょっと前になりますが、nakano fにて行われたろりえ番外講演、「暖かそうな場所」を見てまいりました。
nakano f というのはいわゆるフリースペースで、二階建てキッチン付き。普段はパーティなんかをやってますが、この日は「女の子に優しい」劇団ろりえがジャック。ナンバリングタイトルとは違って、ろりえ所属の四人の女性たちによる番外公演が行われました。
壁際のソファやイスを客席にして、ワンドリンクのサービス付き。冷たい青い飲み物と赤い飲み物が用意されていて、案内してくれた方が実はそのまま女優さん、という仕掛です。
そんなふうにまったりムードから、なんの脈絡もなくいきなり證明がおちてお芝居へ。
孤児の女の子四人が暮らす超高額な賃貸住宅を舞台に、四人の破天荒な生活とそのせいで沸き起こるトラブルと生々しい話。尋常ならざるハイテンションと大胆で残酷な涙の演劇。
ろりえの演劇らしく、孤児、暴力、在日中国人、お金、女性の体、詐欺、浪費……次から次へとハードなガジェットで重たい気分にさせられながら、それらに対するあっけらかんとした解決とこだわりのなさはあいかわらずというべきものでしょうか。
アニーのトゥモローと岡本真夜のトゥモローをあえてごっちゃにさせるこだわりのなさ。
とはいえ、全ての演出のなかで一番反則的な演出は、とにかく会場がヤバイぐらい「熱い」かったことでしょうか。単純にエアコンを切っていただけなんでしょうが、まるで蒸し風呂のようなnakano fの二階で踊り狂う女優さんたちの本気をみました。
とりわけ、今回は志水衿子さんの熱演が光っていたと思います。熱演というか、ダンスの踊りっぱなしも意気軒昂に爽やかで、ちょっと天然はいったムカデに育てられた少女という難しい役をかるがると努めておられる。しかも、パンモロ。よくやったり。
ろりえのお芝居はいつみても業の深さを感じさせます。真面目に取り組む人たちがいるような重たいテーマや重たいものをずっしりと背負いながら、それが壊れてしまったあとはあっけらかんとそんなものはなかったかのように振舞っている。だから、ろりえの芝居は重くて暗くて深くて切ないのに、軽い。もうどうしようもなく軽いです。人が死んだらあっけらかんと捨ててみせ、あっけらかんと埋めてみせる。
命をかけた夢があっても、かなわねとわかったらサクッとやめてみる。
この軽快さがたまらないっ!
そして、この軽快さがたまらなく《リアル》なんですよね。現実感やリアリティでは捉えられない、出来事の正確な質量をろりえの芝居からは感じられるんです。それは、何かを背負うということの「もう無理感」なんでしょう。
「無理」を押し通すではなく、無理なら無理で諦めて、あるいは無理じゃない感じにデウス・エクス・マキナがやってくるならそれを認めて、そういうかるがるしい生き方をおすすめする「ろりえ」は、その軽々しさの罪や残酷さも同時に描き出しています。この両面性、両義性の表出をなんて例えたらいいんでしょう。
あっけらかん、なんてどうでしょうかと思う昨今です。でもこれ、もうろりえ評に使われてるんですよねえ。
あとあと、毎回最後に踊り狂っている「ろりえダンス」がほんとにかわいい! YOUTUBEに上げてもらえませんかね?
次回の公演は12月だそうです。これもまた、観に行くしかないかな。