イベント・レポート――文学フリマ2009 春!

 文学フリマから、数日が立ちました。いまさら感想もないかもしれませんが、文学フリマ事務局の望月さんが感想エントリを求めていること、そして、触れられていないけれど触れるべきことがあるだろうと思い遅ればせながらいくつか雑感を記しておこうとおもいます。

ひだらすブースの動き。


会場入りはマサカの10時半! 先週も同じ会場にいったにも関わらず、ばたばと遅刻感。お隣さんのブースはもう準備をはじめていて、ものすごく手際がよく、きれいなブース設営でした。みならいたいものです*1。届いていた荷物をなんとか搬入し、ばたばたとダンボールをあけて準備開始。今回は文房具もダンボールに詰め込んでの搬入で、ほとんど手ぶらでの参加でした。少し慣れるとそういうことができるようになるんですが、あいかわらずブース設営は苦手です。
 

 今回から見本誌がシールではなくなったので、事前にコピーしておいた紙を委託を受けていたものとCDに貼り付けて提出したあたりで、会場外には何人かの人が並んでいたことにびっくり。同じぐらいの時間に伊藤君がもぞもぞとやってきてくれていろいろと手伝いをしてくれる。この時間がなんともいえず楽しいですね。

 と、開場後すぐ同人音楽サークル「織姫」のあかみさんが見え、またサークルの新刊を楽しみにしていたみなさんが陸続といらっしゃるではないですか……っ! すみません、新刊でなくて、すみませんっ!

 開場後二時間ぐらいで、小峰君、ちょっと遅れてとんかつ君、それから鈴木さんもきてくれまして、ローテーションで順繰りに売り子。会場が広くなったおかげで、若干閑散とした印象もありましたが、見本市のそばあたりが「社交場」っぽくなっており、ゼロアカメンバー(といっていいでしょう)たちや、あるいは白石さんたちが集まって談話していました。峰尾さんからreadymadeの批評誌をプレゼントされました。フリーペーパーでここまでハイレベルな論考とは! うむむ、文学フリマおそるべし! 峰尾・カワハラおそるべし!

 その後、伊藤君に「一応全サークルをめぐってくる」と宣言してA−01からE-30までのサークルを回っていました。A−Eまでのところは小説系サークルが乱立しており、多数のフリーペーパーが配布されています。ライトノベル色の強いものから純文学、ミステリーファンジンまでが勢ぞろいするブースは「トライブ」という言葉では説明できない越境性乃至カオス感に溢れていました。手作りの表装本を作るサークル、豆本をもってくるサークル。文学フリマの小説サークルは、内容のジャンルでは分けられません。
 本の装丁にも創意を凝らしているのです。そのブックデザインに触れた批評家は「歪みねぇな」と賛辞を送るしかないでしょう。
 
 文学フリマの終了時間が近づいてきたところで、「紅い雪」のキリヲさんが着てくれました。うん。ありがとう!! もらった本もちょろちょろ読んでます! キリヲさんとはコミティアに出ている文芸サークルも、ぜひ文学フリマにでるべき! ということでなんか合意に達したような記憶があります。僕はお会いできなかったと思いますがid:sz6さんも見えられたようです。ちょっとだけid:kugyoともお話。彼は今「24」のノリで55冊のブックレビューを行うという暴挙にでました。ちょっとどきどきしますね。参加すると知り合いも増えて楽しいですよ。
 一番うれしかったのは、中学生ぐらいの女性が僕たちの本を買ってくれたことでしょうか。うん300円は安いお金じゃなかったと思いますが、彼女が素敵な本や文学とであることをいのっておりますよー。

 それから、某批評家さまも見えられたらしいです。あぁ、お会いしとぅございました……。
 それから何があったかよく覚えていないけれど、とりあえず文学フリマ終了。ちょっと揉め事を起こしているところもあったようですが、詳細はわかりません。ともあれ、初めての蒲田での文学フリマは無事に終り、片付けまで完全に終わってがらんどうになった大展示ホールを見ると、なんだかとても切なくなりました。
 でも、また、戻ってきます。きっと、たぶん。

雑感、雑記

 さてさて、第八回文学フリマは大成功だった、といっていいでしょう。
 初めて文フリに遊びに来たという人ともお話できましたし、もろもろのブログを見ていると「文学フリマは雰囲気が好き」とか「評論系サークルに有名どころが多く楽しみにしている」とか「著名なブロガーたちが合従連衡してでたサークルが楽しみ」などのコメントがちらちら見られるような感じがします。文学フリマ独自のコンテクスト――というより「文学フリマ」そのものの魅力が浸透し、成長しているのでしょう。これからもどんどん成長していく要素はたっくさんあります。

 でも、規模が拡大したおかげで、全サークルを丁寧に見ることはもうできないかもしれません。少なくとも、一人の人が全てのサークルを回ってブースの写真を撮影するといったことは、厳しいでしょう。この作業は多分に重要なことで、文学フリマという場所の雰囲気をダイレクトに伝える……と同時にWebに乗る情報だけではわからないモノの魅力を、少なくとも売られている現場の様相と共にWeb空間に提供することは、文学フリマの魅力を伝えることと、文学フリマの記録を取る意味で継続したいことではあったのですが。
 少なくとも四人、できれば島ごとに担当をわって6〜8人ぐらいいればできるのでしょうが……。

 とまれ、文学フリマは今後より「サークル打ち」とか事前調査したサークルを見てまわるイベント、という色合いが強くなるかもしれない予感がしました。
 来場者がブースを見るきっかけは、例えばシンパシーだったり「ビビっと」きたり、面白そうな本を売ってるなーとちらりと見たりする瞬間だと思いますが、一ブースにかけられる時間は秋葉原の頃よりも確実に減りました。でもその分大胆にいろんなブースを、つまり自分の趣味とは違うかもしれないけれど楽しそうなブースを見ることを心がけてほしいかなーっと思います。
 さっと通り過ぎるときにシンパシーを大事にすればたぶん大丈夫です。

 今回は落選がなかったとのことでして、前回、前々回に出ていたサークルが多数という印象ながら、初参加サークルも有名どころが陸続と参上。ブロガー系のブース、あるいはコミティア&夏冬コミなどで活動しているサークルの参加が目立ちました。もちろん、形而上学女郎館や文芸空間、筑波批評社といったゼロアカ組ブースも大人気、僕としてはうれしい限りです。

 一方で、サークル行列が他サークルの通路をふさいでしまう問題は相変わらず顕在だったようです*2。しかし会場が広がった分対策もいろいろと打てるのではないでしょうか。何かの対策が次回以降事務局から提案されるかもしれませんが、各自で可能なかぎり解決したい問題です。……僕たちも人のことを言えないのがつらいところですがorz

もはや禁忌感溢れている「パフォー!」について。

 でもって、誰も触れていないのであえて、そうあえて、今回のパフォーについて触れておきます。ゼロアカ道場に代わる企画ブースとして設営されたパフォーブースですが、にぎわっていた形跡はほとんどなく、それであえて、そう、あえて書きます。
 はっきりいって、これは失敗だったのではないでしょうか?*3

 このエントリは、NHKのイベントを設営し、小説系のためのイベントを誘致してきた(と一応看做して)文学フリマ事務局を責めるものではありません。しかし、パフォーの文学フリマへの参加の仕方として、もうちょっと面白くすることは出来たのではないか、という思いがあります。
 大音量のマイクを使って、特権的に人を集めることができる――それもまた悪いことではありませんが――企画ブースとしては、今回の参加の仕方はちょっと適当ではなかったか。

 まずはパフォーの参加要綱を確認しておきましょう。文学フリマの公式解説ではこのように記されています。

NHK「パフォー!」@文学フリマ

NHK 制作局 第1制作センター(青少年・こども番組) 「パフォー!」制作班
A-09,A-10
小説・その他 http://www.nhk.or.jp/paphooo/

テリー伊藤つるの剛士・はんにゃがMCをつとめるNHKの若者番組が、直木賞作家・桜庭一樹とJホラーの旗手・鈴木光司の番組企画を引っさげて、文学フリマに初参戦!!
「パフォー!」は、番組HPに寄せられた投稿から才能を発掘し、明日のスターを生み出すNHKの若者番組。
現在募集中の企画は、桜庭一樹プレゼンツ「超ショート小説」と鈴木光司プレセンツ「リレー小説」。
当日は「リレー小説」の配布と、新作の投稿を受け付けます。
優秀作品は番組にて紹介!さらに、会場で作品を投稿してくれた方、先着50名様には、番組グッズをプレゼント!
明日の文学界をつくる皆さんの投稿、お待ちしています!

※作品はオリジナル限定。
投稿の際は、CD−Rなどにデータを入れ、見本刷りを添付してください。

「パフォー!」 MC:テリー伊藤つるの剛士・はんにゃ・小林千恵アナ
NHK総合 隔週(土)24:00−24:29
NHKBS2 毎週(月)22:55−23:24

 ここに並んでいる「BIGネーム」の方々がとりあえず会場(というかブース)に居なかった事はただの客寄せとゆーことで不問にするにせよ、せっかくの企画ブースが、本当に「ただの投稿受付ブース」でしかなかったことが残念でなりません。

 まず企画ブースの発表から、募集要項告知までの期間があまりにも短かかった。この件に関しては後述しますが、2000字とはいえ、小説の制作に十分な時間がとれたとは思えません。さらに、リレー小説に参加するためには事前に七回分の投稿小説を読み、鈴木氏のコメントを読まなければならず、せめて二週間程度の時間はほしかったように思います。

 さらに、「見本刷り+CDーROMでの提出」での投稿という縛りがきつ過ぎです。事前に参加する意思と準備を完遂していなければ投稿さえできません。
 いくら新刊の入稿を終えている時期とはいえ、サークル参加者たちが、そのために前日前々日に十分な準備時間がとれたでしょうか。せめて、「文学フリマ開催時間内に書いたものでも可」「えんぴつ書きOK」などの条件を整えれば、それこそ様々な参加の仕方がありえたように思います。しかも投稿しなければグッズがもらえないというのも、当然といえば当然ながらこれではグッズがほしくなっても蒲田に来てしまった後ではなんともしがたいものです。

 さらにパフォー内の「リレー小説」も「超ショート小説」の扱いにも疑問があります。
 まず、鈴木光司桜庭一樹が個別の作品にコメントを残した形跡がありません*4これでは、そもそもパフォー! の文芸系企画が、本気で取り組んでいる企画だと思われなくても仕方が無いのでは? 作家先生のご都合もただいにあることとは思いますが、「概説PV」だけを乗せての発表されたものを、発表した「小説」を大切にしているようには思えないのです。*5 
 
 もちろん、文学フリマに遊びにいって初めてパフォーのことを知った人たちもいたことでしょう。そして、パフォーブースに行ったことで*6Web投稿をしようとした人がいたに違いありません。
 しかし、文学フリマから一週間しか経っていないにも関わらず、もうすでに「リレー小説」の応募は締め切られております。
 
 おおすばらしい。

 あ、でも超短編小説のほうは相変わらず投稿は受付されているようです。*7

 マスターコメントがないことに関しては、そもそもマスターがコメントするに値する作品がまだパフォーに投稿されていないだけ、ということならわかります。
 まさかマスターがろくすっぽ投稿作品を読んでいない、ということは考えづらい。やはり、コメントがないことは何か理由があるのでしょう。

 
 締め切りの話に戻りますが、文学フリマ事務局通信に参加を促すエントリが出されたのは五月七日。公式に発表されたのは忘れましたが、事務局通信においてFAQ的なことが発表されており、明確に「投稿ブース」であってテレビクルーなどの参加はないことが記されています。さすがに三日前はきつい……ような気もしますが、一応事前告知はあったにせよ、もうちょっと、せめて二週間ぐらいの時間があればいろいろと違っていたのではないか、という気持ちにもなるわけです。


 もちろん、パフォーブースに投稿した人たちがいることは知っています。小さな入れ物の中にCD−ROMと刷りたての印刷見本が入っているところを見ていましたし、それなりにNHKの人たちも熱心に声を張り上げていたのを聞いていましたから。でも熱心に声を張り上げても「プリンタもパソコンもない」文学フリマ会場では投稿作品を作ることもできませんし、その後のウェブ投稿も締め切られているのでは、ちょっといろいろ無理じゃないかと思わなくもなかったです。
 
 いろいろ書いたのですが、投稿ブースとして、こうしたらよかったんじゃないか話で以下のような参加の仕方はどうでしょうか。

  • すでに文学フリマに出ている本のなかで、献本をうけ、それをパフォー内で紹介する。
  • なんか売る。
  • NHKの技術力*8で、投稿された作品をその場だけで放送したりする。

 うん、いろいろ考えようと思いましたが、ぜんぜん思いつきません。ここまで書いておいてごめんよ。
 ただ、「だからもう参加するな」ということではなく「参加するときにもっと面白く参加してくれ」あるいは「次にもぜひ出てきて面白くしてくれ」ということなのだということです。文学フリマにはまだまだ企画ブースが必要だと思います。コミティアで行われる「部活動」や「展示会」ができるまで、正直もう少し時間が必要かなと思っていて、だからもうちょっとだけ、次の文学フリマにも参加したくなるような、それこそ「ゼロアカ道場」のような突き抜ける楽しさを、企画ブースには要求したい!!! ていうのはいいすぎです。ご苦労様でした、というべき所は覚悟の上、このエントリを投げてみるKYをお許しくださいませ。

これから、このさき?

 一方で、文学フリマに言及するブログを見ていると、「満足できる雑誌がなかった」というようなコメントもあります。オイオイ、ちゃんとブースをみてんのかYO? と一瞬思わなくもないものもあるのですが、その不満から新しくじゃあ自分たちで作っちゃえ話を進めているところもあるようです。
 
 うん、だから作っちゃいなよ、YOU! 
 
 とりわけ、こうした不満はコアなファンが多いSF関係に見られる言説であったようです。SFファンよ、文学フリマにあつまれー。


 蒲田の会場が大きくなった分、もうちょっと新しいことができるような気はしました。運営をしてくださる事務局の苦労はよくよく分かる一方で、例えば第一回以来禁じ手となっていたシンポジウムや、あるいはPVの放送(PV作ってるところあるのかな?)、ライブ(ライブ?)なども出来そうです。M3ではブースの端に映像スペースを設けて、巨大なプロジェクターの下にたくさんの人がサークルPVを見学しています。そういうのが、できたら、面白い、のかなぁ。文学フリマ潜在的な面白さというのはまだまだあるはずです。
 また、コミティアで活動しているサークルたちもぜひ文フリに参加してほしいと思うのです。ライトノベルだから「文学」を敬遠しているというサークルもあると聞きますが、ライトノベル系サークルの活動も文学フリマの目玉でもあります。ざっと見たところ、八分の一程度はラノベ系と看做してもよいのではないか、と思います。コミティアには本当に面白い本を出すサークルがあることを僕たちは知っていますから。

 また、歴史、哲学系のサークルも積極的に参加するべきです。文学フリマは「文学」と名前がついていますが、そこにある歴史的認識や、哲学知識の援用はまだまだ修正の余地があるものが多い気がします。我こそはと思うサークルさんは、ぜひぜひ。出展料4500円の価値は確実にある……かも。

オススムサークル!

「クロスクロカワ」「はんせい社」「航時社」とか個人的にお世話になっていたり好きだったりするサークルさんもいるのですが、おすすむサークルを三つほど。

  • 黒死館附属幼稚園
  • ゴシックカルチャー研究会
  • 界遊

 次の文学フリマあるいは別のところであったら。そのサークルに遊びにいってみてください。
 
 というところでした!

その後。

 文学フリマ終了後は、蒲田のとんかつ屋(ひだらすの打ち上げはとんかつ屋と決まっているのです。)にて、会議。文芸同人はどうしていくべきか、もっとさくさんの人に面白さを伝えるにはどうすればよいのかなどについて激論。あと、華原朋美は荒くれ芸人であるかどうかについて激論が交わされました。
 どのようなとんかつが供されたかについては、来週水曜日UPの「WebS.E.グルメ版」をおたのしみに。
(文責 安倉義たたた)

*1:E-29 Studio Cocoon

*2:再イオン化さんところを参照

*3:もちろん、成功とか失敗といった尺度で測ること自体がよろしくないことは認識していますが、そうあえて。

*4:ダンスのところではちゃんとTRFのメンバーがコメントしています

*5:Webでの発表、ということでデータを加工したり見やすく調整したりする作業をされている人もいて、これはこれでコストがかかっているのだ。というのはわかりますが。

*6:ビラをもらえただけですが。

*7:あ、今気付いたんですが、何ですか、ユーザーコメントが増えると何かNHKのアクションがあるという仕組みで、ユーザーコメントとか「投票」とかを増やしてほしいということでパフォーブースが出ていたんですか? それならわかります。あ、なんだそういうことか。つまりあれですね、ダンス、パフォーマンス、ユーモア、アート、ミュージックなどのカテゴリの中で「etc」というとてもとても伝統的なカテゴリに入っている「超短編小説」と(なかば頓挫しかけているように見えなくもない)「リレー小説」を復権させるために認知度を上げたいです話で企画ブースが設営されたとそういうことだったのですね!

*8:期待度800ぐらいで