演劇>>>>MU>>>相思相愛確信犯


MUの芝居『相思相愛確信犯』を見た。劇団としてのキャリアはそこそこあり戯曲賞も受賞している。

そんな劇団の芝居は下北沢ONOFFシアター(駅前劇場か)でこっそりとみた。なぜみたか。理由は簡単。デートである。

芝居の内容は「恋愛病に悩む患者たちを救う厚生施設で起こる、恋愛と病気をめぐる男女の、ちょっとエッチなどたばたコメディー」である。

違うかもしれない。

とにかく役者がうまかった。傷というほどではないものの、シーンごとの展開が断続的で、つなぎが悪いような印象を受けたけれど、ワンシーンごとに見せる役者たちの演技がひたすらうまい。キャラクターというのは舞台の上にたつ役者たちの身体を使った、他者の魅せ方なのだろうけれど、そのキャラクターを配置し、立ててゆく構成の妙がすばらしい。

とりわけ、「猫のホテル」の村上航が演じる吾妻。彼の存在感はダントツに強くてすばらしい。思わず「村上航、天才」とアンケートに書いてしまったぐらいである。
 
いろいろな意味で面白い舞台で、その装置、演出、役者、脚本など、語りたいことはたくさんあるのだけれど、あえて『相思相愛確信犯』を使っていいたいのは「下ねた」についての省察である。

冒頭で、所長(村上航)が下ねたを連発するシーンがある。その瞬間の、微妙な客席の空気。

恋愛病(どうやら恋愛に関するトラブルを誘発しやすい人たちのことをいうらしい)の男女が、病の治療のためリハビリセンターらしきところに入るため、所長と職員との面接を受けるシーンから舞台は始まる。それぞれ男と女で別々に面接をうける。面接の段階からそれぞれのメンバーがなにかしらの問題を抱えていることが暗示される「事件」が示され、職員と所長が彼ら/彼女らの問題を解決すると約束して面接が終わる。

その後、二人の職員が今回入所(?)するメンバーの噂話をして、「これは楽しいことになりそうだ」という。その証左として、男の職員が「所長、勃起してた」という。

それが演出上の失敗だ、とは思わないし、まさにこれから起こる状況が男女のセクシャリティをめぐって展開されることの予告/暗示としてはなるほど、上出来だ。けれどもその勃起が、所長の何を表していたのかについてはどう読んでいいのかよくわからなかった。

しかし、「勃起」という言葉を使ったに凍った奇妙な沈黙。すでに沈黙している客席がさらに「黙る」なんてことがあるのかどうか。

「黙る」としかいいようのない沈黙のなかに僕は呆然と座っていて、いまいったい何が起きたのか、そのときにはよくわからなかった。

  • つづく!