ヨミビト

  • 「雑文工房」刊、A5版、84ページ。読みやすいニ段組でレイアウトもきれいだ。表紙に「ヨミビト」裏表紙にも。完全な小説集である。
  • 内容は短編の小説集でショートショートも含めて九編の小説がのる。装丁と画は菊池健が担当しており、見栄えは良い。
  • 中身は・・・正直僕の感性としてはいまいちかもしれない。ストレートな小説よりも冒険的・実験的な作品が多く、奥咲ヒロのTV or not TVは楽譜まで入れてしまうというアヴァンギャルドな作りで、高い視覚効果を狙っていて面白い。しかし、小説としての完成度としては、さまざまな実験的手法の必然性がよくわからないちぐはぐな作りで、それらの手法をつかって「何がしたいのか」いまいち不明瞭である。出来の悪い高橋源一郎の『連続テレビ小説ドラえもん』みたいだなと思いだからこそある種の惜しさがあった。
  • ショートショート,三浦の「月華」がユニーク。
  • 書いてあるとおり「7:3で自分達のためにつくった」というのはそのとおりだなと思わざるをえなかった。
  • でも楽しみながら本を作るというその営みをやり続けるという態度、あるいは自分達のためにも本を作るのだという態度の潔さと、彼らのようなグループがあることが僕には素直にうれしい。本を作るということは出版業の特権ではない、ということをちょっとだけ確認させてくれる。
  • 表紙は問答無用にすばらしいので、ジャケ買いである。