神風

  • 早稲田文芸会の編になる百円文芸誌。A4版。48p。表紙はボール紙みたいなもので、右綴でテープ止め。ちょっと製本は不安かもしれない。
  • 正統派の文芸誌という印象で。全編小説。傑出した作品があるような感じはしない。けれども、駄作もない。
  • 六篇の小説の中では、比較的であるが、蒔俊樹「梯子」がおもしろかったかもしれない。床から梯子が生えているというヘンな先生と、僕のたわいのない会話。日常にいる僕と、日常の向こう側にいる「らしい」先生との、不思議な交流を描いた作品である。
  • 「梯子」は、会話を中心しながら互いに踏み込みどころを計る微妙な距離感を描くその巧みさが評価できる。会話文がやたらと多い小説がモテる昨今だけれども、会話の距離感は、二人を隔てる壁と溝そのものである。年齢、立場、人種、性別。そんな壁に敏感な人の作品という印象を受ける。だからほんとうは、このテーマはもっと長い射程のある作品を作り出せる。
  • ついでに、上下運動の物語りでもある。
  • 早稲田文芸会は、早稲田大学のサークル。前書きにちょろっと自分たちの紹介があるので参照のこと。
  • こんな感じです。