文化と表現VOL1

  • 「青年文化ゼミ有志」製作。どこかの大学の自主ゼミで、どこの大学かは本文中に多少ヒントらしきものがありますが、奥付にないので一応不明としておきます。A4版。単色のコピーで、紙もよろしくない。中身オンリィの紙面ですが、なんか妙に安かったような気がするのでよいでしょう。小説三篇と評論二編というつくり。
  • 小説については特に何もいいません。
  • それよりもこの雑誌の見所は「現代日本の若者文化〜女性ファッション誌における分析〜」でしょう。巧刀 道悠(なんと読むのだ?)さんの執筆になる20pに及ぶ力の入った秀逸な研究である。
  • 二〇〇六年から二〇〇七年度にでた多数の女性ファッション誌、例えば『CanCam』『With』 『More』 『JJ』 『Ray』 『Pinky』 『vivi』などをとりあげて、それらのなかでなぜ『CanCam』が売れるのかをそれなりに説得力ある論理で分析するものである。
  • Cancam』はファッション誌を読む読者層に受け入れられる四象限「フォーマル」「姫」「カジュアル」「セクシー」系列にそれぞれマッチするモデルや、紙面づくりを心がけていて読者が雑誌に求めるファッション上の諸要素をすべて満たしている、ということなのだろうけれど*1、実にここまでの展開が鋭い。
  • 2007年度にはまたファッション業界に変革があったようで、今後はまた違う視点から見直す必要があるようだけれど。
  • 個人的には「なぜこのような象限が発生するのか」という問いかけ、つまりこのカテゴライズはどのように生成されるのかという点の分析がほしかったかもしれない。「こうなってる」のは十分わかるが「なぜこうなるのか?」の「なぜ」があったらもっと面白いものになっただろう。
  • あれやこれやと書こうと思ったけれど、やめておきましょう。
  • 最後の「ネタ」と称して、面白いと思ったのだろう、「彼氏を自分好みのファッションに着せ抱える」ことを「調教する」という表現で表しているという話が載っているが、ここは面白いですね。たしかに。
  • ファッションや身だしなみなんかを整えさせることが、女性にとって男性を「支配する」キーコードになっているってことなんでしょうか。『More』の表現らしいのですが、そうした調教が必要なカレシを豚、モグラ、羊、ウサギ、ライオン、イノシシ、ヤギ、リス、ウシに分類してあるそうな。動物に例えられた方は給ったものではないけれど。
  • ヘンな言い方をすれば、女性が調教を通して男性を「人間」にするっていうことなのかもしれない。この「人間性」がファッションに宿る、という指摘はすでに誰かしてそうだけど、その典型例がこんなところにあったわけですか。
  • うん、面白い。
  • もう一つの評論「趣味類の強さと弱さについての覚書」は主張がいまいちわからなかったのだけれど、趣味を中心とする人間関係の説明は、「アマトラ」概念を使って説明する『破滅派』の論考に比べるとさすがに見劣りする印象はぬぐえません。
  • 長くなったのでこのへんで。

*1:なお、私めはあまりファッション誌というやつを買わない国の住民でして、ええ。多少の誤謬があるかもしれません