その6 

友達と駄作

  • 「ブログ時代の知的遊戯マガジン」と表紙にはいくつかの企画と、空に向かって両手をのばし、カメラのかわりに指で四角をつくってなにかを覗き込んでいる赤い服の女の子。都会の町並みとあいまって、なんとなく涼やかな印象のある表紙である。A5の50p。表紙のみ多色刷りでフィルムPPM加工なのかしら。とてもいい。中は黒単色だがいい紙をつかっている。
  • 雑誌としての構成や紙面展開は群を抜いて高度なつくりになっている。文字を組んだだけの諸誌とちがい、一ページとして手抜きがない。本気度の高いすさまじい一冊だ。
  • 企画としては「今検証すべき、ライトノベルの軽さ」がめだまらしい。街灯ウォッチ、フォトポエム、小説、コラム、ブックレビューとバランスのよい目次だが、最後の最後に「あまり真にうけないように」と注意書きがある。
  • という注意書きのとおり、たしかにそうとうふざけていて、激烈な口吻も企画のばかばかしさも、どことなくジャンクなにおいがする。こうしたどうでもよさげな話や企画と出会えるのも文学フリマのほんっとおおにいいところである。
  • この雑誌の来歴はともかく、ネットにおける人脈を駆使して創られたと思われる企画、文章レベルは総じて高く、まさに「一読の価値がある。」
  • その一方で、企画の「ライトノベルの軽さ」などは、ある種の熱狂的なファンからは叱責をかいかねない挑戦的なつくりになっている。実際に重量を調べて重量とコスト比で一円当たりのコストパフォーマンスを考えよう、というすさまじくばかばかしい企画である。が、でてくる結果は意外なほど何かこう、出版というものの現実を言い表しているような気もしてくるから不思議だ。
  • 趣味の雑誌というわけでもなかろうが、神崎紫電『マージナル』に対する逆恨み? も面白い。雑誌全体から著者たちの感情が滲み出てきて、それが本気とギャグの両方のオーラで組織されている。
  • そういうオーラで全編かかれているが「中の人は電気ネズミの夢をみるか!?」において、ブログメディアを物理的にもつサーバー保持の企業の姿勢にたいする危惧は、確かにそうとう深刻な問題である。ここの問題意識には強く共感したい。
  • ブックレビューは感情爆発で笑ってこらえて面白く、そのくせ深い。小説は、個人的には首をかしげるが、ほかの作品のレベルの高さ故にかすんだだけかもしれない。
  • 「ニセ雑誌」という新ジャンルの開拓をこの雑誌に与えることは認められてもいいんじゃあないでしょうか。ネタから本気を、本気からネタをすかして見せる鮮やかな編集と創作の技術に敬意を表したい。