井手口彰典『同人音楽とその周辺 新世紀の振源をめぐる技術・制度・概念』

こんばんは。なんと私達の同人誌『S.I.』を初出とする原稿がついに単行本化されました。

井手口彰典『同人音楽とその周辺 新世紀の振源をめぐる技術・制度・概念』です

同人音楽とその周辺: 新世紀の振源をめぐる技術・制度・概念

同人音楽とその周辺: 新世紀の振源をめぐる技術・制度・概念

同人音楽に関する音楽社会学初の研究書であり、今後「同人」や「コンテンツ」「音楽」といったキーワードを研究する人たち/同人創作活動をする人たちにとってに必読文献になること必至の神著です。『S.I.』に同人音楽批評の論文として掲載された一章が含まれる七章構成、同人音楽やミク、ニコニコ動画といったコンテンツ・インフラ群についての論考と、そもそも同人に関するイメージがどのように形成されてきたのかを論ずる「 第7章 純愛者であることの困難――アマチュア音楽について」という論文が掲載されています。
 とりわけ、この七章目に関する記述は恐らくいままででた様々な『同人言説』の中で、もっとも重要な位置を占める論考になるのではないでしょうか。なぜ「アマチュア」の作品群が、商業作品やプロと異なった見方をされてしまうのか。なぜ「アマチュア」の環境が改善されないのか。そこに「アマチュア」であることにたいする在る種の思い込みが発生していることを鋭く指摘しています。そのキーワードは「純愛」。2000年代半ばに流行った主に恋愛に関するこの用法は、恋人の代わりに同人に対して使ったのが素晴らしい。というよりも、純愛はフェチズムの




早速書評が出ています。

本が好き!「混乱の中で自由に音楽を語るために。『同人音楽とその周辺』」
http://news.honzuki.jp/?p=8406


目次
 序章 本書の概要
  1 現代文化としての同人音楽
  2 本書の位置付け
  3 術語について
  4 全体の構成について

第1部 同人音楽
 第1章 同人音楽への招待
  1 即売会へようこそ
  2 M3、スタート!
  3 同人音楽の「中身」

 第2章 概念としての同人音楽とその射程
  1 複数の評価スケール
  2 幻想としての「原―同人音楽
  3 同人音楽を支える社会的環境
  4 環境に起因する傾向

 第3章 同人音楽「と」ジャンル
  1 同人音楽はジャンルなのか?
  2 ジャンルの変転性と固定性
  3 混在と越境
  4 スティグマとエンブレム

 第4章 同人音楽批評は可能か
  1 同人音楽の「語りにくさ」
  2 新たな「語りにくさ」とアレンジ系同人音楽
  3 群体としての音楽
  4 「うごめき」とどう向き合うか

プロムナード
 A 音系同人活動の過去・未来――相川宏達氏インタビュー
  1 M3の誕生
  2 「音系」の意味
  3 変化する音系
  4 これからのM3

 B 表現のための「場」を求めて――寺西慶祐氏インタビュー
  1 即売会の立ち上げに向けて
  2 名前と理念
  3 M3「以前」
  4 グレーゾーンと理論武装

 まとめ

第2部 同人音楽の周辺
 第5章 現代的想像力と「声のキャラ」――『初音ミク』について
  1 『初音ミク』の新しさ
  2 現代社会での「キャラ」
  3 魅力の所在
  4 初音ミクと「P」
  5 再編集が拓く地平

 第6章 オンライン世界での協働――『組曲『ニコニコ動画』台湾返礼』について
  1 組曲の登場と波及
  2 返礼プロジェクトの成立と推移
  3 舞台裏
  4 プロジェクトが残したもの

 第7章 純愛者であることの困難――アマチュア音楽について
  1 アマチュアコノテーション
  2 近世―近代日本の状況
  3 機能から純愛へ
  4 アマチュアスポーツ論への目配り
  5 現代における強化と排斥

 終章 ふたたび、同人音楽
  1 「妨げられない」実践
  2 神話化されることの危険性
  3 音楽する力
  4 同人音楽の可能性
  5 社会への架橋

初出一覧

あとがき