Spore VOL.5

  • A4。113ページ。クリアPP加工。花を手前に、後ろに女性。の表紙。OUR FLOWERSの文字がコンセプトを象徴する。INTERVIEW荒木経惟かわしまよう子、塚谷裕一。その他のアーティストたち。宮下マキ/青柳圭介/喜多村みか/小山田桐子/パオロ・ファレージ/小野寺士可太/トマシュ・クチェロフスキー。
  • Word&VIsualのとおり、小説/漫画/インタビューなどといったものと同時に、写真を強力にフューチャーした雑誌。クロスオーバーを狙った多才な執筆陣を抱えていて、そのうえインタビューが豪華。113ページという厚みも手伝って、次々と繰り広げられる文章やデザインに飽きることなく楽しくよめた一冊である。
  • 文学フリマにはたぶん、1円>100円>300円>500円>1000円>それ以上という値段帯が存在しているように思えるけれど、『Spore』は1000円帯の本としてかなり善戦していたように思われる。イベントや写真展などとも連動しているらしくさかんに告知を行っていた。ブースの作り方も綺麗だったような気がする。
  • 個人的には青柳圭介の「花日記」というポートレート集が気に入った。なんとない日常の写真集だけれど、淡い色調の日常はこれから進む明日ではなく、寝る前に思い出す今日のできごとのような振り替える優しさにあふれている。
  • 小説も総じてレベルが高い。小山田「Life is flower」がなんとなく釈然としない話ながらまとまっていて読みやすい。もう一本の話もけっこう面白かった。
  • 漫画は異色。パオロ・ファレージの作品は一見アナロジカルな読解を準備しろといわんばかりの不可解さがありながら、もう一度読み直すとこれはアナロジカルに読むことを避けろという話なのかと思う。花についての人間の思索のばかばかしさを描いたほほえましい作品だ。
  • release partyのレビューも面白かった。あんな風に本を置く人がいたのかーっていう目からうろこ。僕のアンテナもにぶってますなぁ。内沼普太郎っていう人、おもしろい。
  • ずいぶんたくさんの人がいるな、というのが一番の印象。これだけの創作力あふれる人材を確保するのは大変だっただろうし、こうした方向を目指す誌面をつくりたいという熱気も伝わってくる。
  • ただ、やはり1000円ならばもっと厚くあってほしかったし、強力なコンテンツも用意してほしかったかもしれない。ほとんど商業誌と張り合えるだけの力をもっていながら、なんとなく真正面からアーティなものを作ろうとしてしまいすぎているのではないかと思えた。
  • とはいえ、買ってよかった千円雑誌、である。
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