内容紹介そのいち。

没になった巻頭言特集。

  • 1.コンセプト 冒険/鍵/次/
    • サプライズド・エンカウンターはドラクエ世代の一つの夢だ。平野にほおりだされて、問答無用で敵に出会うその瞬間の切り替え、世界が変わる温度と、新しい敵にであえる歓喜と不安には誰もが夢中になっただろう。けれども、現実世界はゼロ年代を迎えて、全てが平らな「町」になりつつある。他者と、世界と、文化と、夢と、あるいはその敵とであえるマップの構築を目指して、僕たちは、戦う。S.E.はその意味で出会いを拒む全てと戦う冒険の書たりえることを夢見る。その鍵が、その次が、あなたを違う文芸の道へひきずりこんでいくことを、ここに。

  • 2.ちょっとかっこよく。
    • ポストモダンの二つ目の状況は、もう書かれるべき事は書かれてしまったというシンプルな蕩尽の上に成り立ってる。つまりもう、言葉に魔力も力もなくなったということだ。そのうえで、我ら「左隣のラスプーチン」は書かれつくされた廃墟の【今】から夢見ることを宣言する。『S.E.』は突然であってしまう奇跡を目指して、今ここにある何かから次にここにありうるなにかへの転換を信じて、刊行する文芸誌である。文学は死んで、文化はディズニーランド、それでも私たちにはまだ出会うべき何かがあるに違いない。敵を信じるドンキホーテたちの冒険を、存分に味わってみてほしい。
  • 3 萌え。
    • ば。ばかぁ! 背表紙なんかみるなぁっ!!!
  • 4 少年文芸風に。
    • 私たちが目指す道は宇宙の隅っこというより、地中に隠れた秘密基地かもしれません。モグラが掘ったトンネルを抜けて、そこに広がるどうでもよさそうな場所。そんな「どうでもよさそう」だからこそ宝物が隠れているようなそういう文芸誌を夢見ていました。その一つの答えが、そして結晶が『S.E.』です。正しく、人気のある文芸誌や漫画誌ではなく、雑多な、でも完全な生態系をもつもう一つのコトバの世界。それはもしかしたらノイズとよばれるものかもしれないけれど、私たちはそんなノイズを楽しむ人種であるわけです。

 さて、それでは、いってらっしゃい。

    • 自動化というタームは裏返しには退屈の言いかえたコトバだ。退屈から逃れるためにありとあらゆる努力を惜しまず、文字という文字は宇宙人も未来人も超能力者も凡人も、かたっぱしから白紙の上にインクのしみとして召還しまくった。インクのしみに取り付かれた人間たちの楽園はもうどこにもないけれど、その亡霊たちにとりつかれた生き様が、僕らの次を歩く誰かの道標になることを信じてる。だから、世界中は記号の楽園とテクストのリゾートで埋め尽くされた中に、我らが信じる文学の道標を撃ちたてるため、ここにS.E.の発刊を宣言する。
    • 出会いとはたぶん二つの意味で冒険だ。別れを内包せざるをえない悲しみと、何かを起こす予感に震える興奮を、その両方を喚起させるアンビバレントな出来事として。僕らはその出会いの場を作り出す夢を見ていて、それは文学の旗印の元に輝く百里塚のようなものであったらいいと思っている。評論家に認められなくてもいい。たくさんの人に読まれなくてもいい。ただこの一冊が今から次へ、次から先へ、あるいは後ろへ戻るための出会いを、出会いを恐れぬ人たちへ送る。「ハジメテデアウ文芸誌」S.E.の発刊はそうした出会いへ繋がるハブである。

とまぁいろいろ考えていたのですが、これらのどれかは裏表紙とかに採用されているかもしれません。どういう雑誌を作ろうとしていたのか抽象的な台詞のはしばしから、少し見えてくればいい。